MGM-1 (ミサイル)

MGM-1 マタドール

MGM-1 マタドール（Matador）は、アメリカ合衆国のマーチン社によって開発された最初の作戦運用可能な地対地巡航ミサイルです。このミサイルは、ドイツのV1飛行爆弾と似た設計思想に基づいています。

概要

マタドールの試作機であるXSSM-A-1の初飛行は、1949年1月にホワイトサンズ・ミサイル実験場で行われました。1953年末には、最初の部隊が配備され、初期の型としてB-61AがW5核弾頭を搭載していました。また、マタドールは通常の弾頭として2,000ポンドを搭載することも可能でしたが、この通常弾頭が実戦で使用された記録は残っていません。1950年代後半まで、全てのマタドールは核弾頭を装填していたとされています。

このミサイルは無線リンクを用いて操縦され、地上に設置されたAN/MSQ-1レーダー行仕事のネットワークによって追跡されました。しかし、この技術には制約もあり、誘導距離は約400kmに制限され、敵の妨害を受けやすいものでした。1954年には、新型の誘導装置を備えたYTM-61Cが開発され、1957年から運用が始まりました。この新型では、最大飛行距離が1,000kmに延長され、高い精度を持つことが期待されましたが、作戦には早々に使用が中止されました。

特徴と運用

TM-61Cは、その独特の外観から「犬小屋」と呼ばれる特徴的な後部部分を持っています。この部分には、当初は電子機器が搭載されていましたが、改良される中で取り外されても形状はそのままとされていました。また、発射要員は11名で構成されており、発射装置はトラックに設置され、移動式であったものの、その移動能力は限界を迎えたため、固定式に方針が変更されました。

ミサイルを移動するためには多くの車両が必要であり、発射装置や支援車両が併用されていました。典型的な発射サイトでは、予備の発射台が設置され、迅速な発射準備が可能であったことが求められました。発射操作は、十分な訓練を経た要員が行い、状態に応じて15分から最短6分で発射準備を行うことができました。

飛行プロファイルと精度

マタドールの飛行は基本的に単純で予測可能でした。発射士官が2つのスイッチを押すと、ミサイルは加速を始め、燃料が尽きるまで上昇を続けます。目標までの約6マイル地点で、弾頭は急降下し、設定された高度で爆発します。ただし、当時の技術では精度は現代の基準には及ばず、1マイル以内の命中を目指すミサイルとして評価されていました。そのため、実際には都市に存在する軍事施設のような広範囲なターゲットを狙う傾向がありました。

退役とその後

マタドールは総生産数1,200発で、最後の発射は1962年に行われ、それ以後現役を退きました。主に西ドイツ、台湾、韓国へ配備されていました。訓練や整備はフロリダ州オーランドやケープ・カナヴェラルなどで行われ、その機材は解体され市場に出されたとも言われています。

現在の状況

現在、MGM-1 マタドールは複数の博物館に展示されており、航空技術やミサイルの歴史を伝える重要な一品となっています。ノースカロライナ州のカロライナ航空技術博物館や国立航空宇宙博物館などがその代表的な例です。技術の進歩に伴い、MGM-1は今では貴重な歴史的遺産として認識されています。

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