MGM-18 (ミサイル)

MGM-18 ラクロス：短命に終わった戦術弾道ミサイル

MGM-18ラクロスは、アメリカ陸軍が運用した短距離戦術弾道ミサイルです。地上部隊の近接支援を目的として開発されましたが、技術的な課題や信頼性の問題により、短期間での運用に終わりました。本記事では、ラクロスの開発から運用、そして退役までの経緯を詳細に解説します。

開発の経緯

ラクロスの開発は、従来の野戦砲を補完する短距離誘導ミサイルの必要性から始まりました。当初はアメリカ海軍が中心となり、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)やコーネル航空研究所が研究開発に携わりました。しかし、1950年、アメリカ統合参謀本部の決定により、ラクロス計画はアメリカ陸軍に移管されました。これは、朝鮮戦争勃発という国際情勢の変化が大きく影響しています。陸軍は計画を前倒しで開始し、開発は加速していきました。

研究開発段階では、固体燃料ロケットモーターの使用や、無線指令誘導方式の採用などが決定されました。コーネル航空研究所とグレン・L・マーティン・カンパニーが主要な開発企業となり、技術的な課題を克服するために努力を重ねました。しかしながら、誘導装置の信頼性、特に電子妨害対策(ECM)に対する脆弱性といった問題が、開発期間を大幅に延長する要因となりました。1954年から開始された試験では、何度も問題が発生し、改良と修正が繰り返されました。

開発過程では、誘導装置の改良を目的としたMOD 1の開発も行われました。しかし、MOD 1の開発は中止となり、これはアメリカ海兵隊が計画から撤退した要因の一つとなりました。ラクロスの弾頭は、核弾頭、破片効果弾頭、成形炸薬弾頭の順で開発される予定でしたが、核弾頭を含むすべての弾頭の種類が開発されました。

運用と退役

1959年7月、ラクロスはアメリカ陸軍に配備されました。最初の配備部隊は、オクラホマ州フォート・シルに編成された第41砲兵連隊第5大隊でした。その後、ヨーロッパや韓国にも配備されましたが、その運用期間はわずか3年半でした。ラクロスの信頼性の低さが、早期退役の大きな理由となりました。配備されたシステムは許容範囲内の信頼性を確保していましたが、完璧ではなく、運用上の問題も残っていました。そのため、1964年2月、ラクロスは退役しました。

ラクロスの仕様

まとめ

MGM-18ラクロスは、技術的な困難や信頼性の問題に悩まされ、短命に終わった戦術弾道ミサイルでした。その開発と運用は、当時の技術水準や国際情勢を反映しており、軍事史における興味深い事例と言えます。ラクロスの開発に携わった技術者たちの努力と、当時の技術的制約を知る上で、貴重な資料となります。

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