MUD

MUD（Multi-User Dungeon）とは

MUDとは、コンピュータネットワークを介して複数のプレイヤーが同時に参加できるオンラインゲームの一種です。主にテキストベースで展開されることが多く、そのルーツは1970年代後半にまで遡ります。Multi-User Dungeon、Multi-User Domain、Multi-User Dimensionの略称として知られています。初期のMUDは、グラフィックを伴わないテキストベースのゲームが主流でしたが、技術の進歩とともにグラフィカルな表現を取り入れたゲームも登場しました。これらのグラフィカルなMUDは、後にMMORPG（Massively Multiplayer Online Role-Playing Game）と呼ばれるジャンルへと発展していきます。

MUDの特徴

MUDの最大の特徴は、複数人でプレイすることを前提としている点です。初期のコンピュータゲームはコンピュータ対人間の対戦が主流でしたが、MUDではプレイヤー同士が協力したり、競い合ったりしながらゲームを進めます。コンピュータはゲームのルールを管理する役割を担いますが、キャラクターの作成から交流、シナリオの作成まで、ゲームの大部分はプレイヤーの主体性に委ねられます。この自由度の高さが、MUDの大きな魅力となっています。

MUDの歴史

前史

MUDの原型は、1977年にPLATOシステム上で登場しました。ヨーロッパを中心に開発が進められ、特にエセックス大学では学生を中心に多くの人々がプレイしていました。MUDは、当時「Multi-Undergrad Destroyer」や「Multiple Undergraduate Destroyer」とも呼ばれ、学生たちが熱中するあまり学業に支障をきたすほど人気を博していました。1980年代には、その人気はアメリカにも広がり、安価なパソコンでログインする人々が増えていきました。

MUD1とPLATOのゲーム

最初のMUDである「MUD1」は、1978年にエセックス大学でロイ・トラブショーとリチャード・バートルによって開発されました。当初はアセンブリ言語で書かれていましたが、後にBCPLという言語で書き直されました。データベース言語にはMUDDLが用いられました。MUDという名称は、当時PDP-10で人気のあった「Dungeon」というゲームに由来しています。ちなみに、この「Dungeon」は後にインフォコム社が「Zork」として商業的にリリースすることになります。エセックス大学で作られたMUDの一つ「MIST」は、JANETというヨーロッパのアカデミックネットワークを通じて誰でもプレイすることができ、初期に人気を博しました。

一方、PLATOシステム上では、「Oubliette」というゲームが1977年に公開されましたが、一人でのプレイが難しく、複数人での協力が必須というゲームバランスでした。また、同年には「Moria」というゲームも登場し、一人でも複数人でも楽しめるゲーム性や、当時としては先進的なグラフィカルな表現が特徴でした。しかし、プロプライエタリなプログラムだったため、PLATOシステムを越えて広まることはありませんでした。イリノイ大学では、高校生のグループによって「Avatar」という2.5DのMUDも開発されました。15人のプレイヤーが同時ログインしてモンスターと戦うことができ、PLATOシステム上で人気を博しました。

1970年代後半には、PLATO上で多くのMUDに似たゲームが開発され、これらのゲームが後のMUDの開発に大きな影響を与えました。

MUDの種類

MUDは、その特徴やプレイスタイルによっていくつかの種類に分類することができます。

Graphical MUDs（MMORPG）

初期のグラフィカルMUDには、1985年にルーカスフィルムのために作られた「Habitat」などがあります。1990年代後半になると、コンピュータの計算能力の向上やインターネット回線の高速化に伴い、グラフィカルなMUDはMMORPGとして発展し、多くの人々に楽しまれるようになりました。

その他のMUD

- Talkers and spods：チャットなどのコミュニケーションを重視したMUD
- Role-play intensive MUDs：ロールプレイを重視したMUD
- Player-Killing MUDs：プレイヤー同士の対戦を重視したMUD

これらのMUDは、ヨーロッパを中心に広く普及しました。

日本におけるMUD

日本では、ブラウザゲームの中にMUDに分類できるものも存在しますが、テキストのみで運営される商用ゲームは少ない状況です。

MUD関連の研究

MUDに関する研究としては、MITの社会学者シェリー・タークルが書いた『接続された心―インターネット時代のアイデンティティ』（原題：Life on the Screen）などが有名です。MUDが人々のアイデンティティ形成や社会交流に与える影響について研究されています。

まとめ

MUDは、オンラインゲームの歴史において重要な役割を果たしてきました。テキストベースで展開される自由度の高いゲームプレイは、多くのプレイヤーを魅了し、後のMMORPGの発展に大きな影響を与えました。現在では、MUDはレトロゲームとして扱われることもありますが、その革新的なゲームシステムやコンセプトは、現代のオンラインゲームにも受け継がれています。

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