Mathesis (雑誌)

Mathesis: Recueil Mathématique

『Mathesis: Recueil Mathématique』は、19世紀後半から20世紀にかけてベルギーで発行された、極めて重要な数学学術雑誌です。この雑誌は、数学者のポール・マンション（Paul Mansion）とジョセフ・ジャン・バティスト・ノイベルグ（Joseph Jean Baptiste Neuberg）によって1881年に創刊されました。当時のベルギーにおける数学研究者や愛好家の間で、交流と情報交換の場として重要な役割を果たしました。

前身誌とその終焉

『Mathesis』が誕生するまでには、ある前史が存在します。1874年、マンションとノイベルグは、著名な数学者であるウジェーヌ・シャルル・カタラン（Eugène Charles Catalan）と共に、『Nouvelle Correspondance Mathématique』という雑誌を創刊していました。この雑誌は、数学に関する様々な問題提起や解答、論考などが掲載され、数学コミュニティ内での活発な意見交換を促しました。しかし、残念ながらこの『Nouvelle Correspondance Mathématique』は1880年に刊行を終えてしまいます。この廃刊という状況が、マンションとノイベルグに新たな数学雑誌の必要性を痛感させることとなりました。

Mathesisの創刊と発展

前身誌の廃刊を受け、ノイベルグとマンションは間髪おかずに新たな数学雑誌の創刊に取り組みます。こうして1881年、『Mathesis: Recueil Mathématique』が誕生しました。創刊当初、この雑誌はフランスの有力な学術出版社であるGauthier-Villarsから発刊されました。これは、国際的な学術ネットワークの中での『Mathesis』の地位を確立する上で重要な意味を持ちました。雑誌は、解析学、幾何学、代数学、数論など、数学の幅広い分野にわたる記事や問題を掲載し、高い学術水準を保ちつつ、学生から研究者まで、幅広い層に読まれました。

第一次世界大戦による中断

順調な刊行を続けていた『Mathesis』でしたが、20世紀初頭に勃発した第一次世界大戦は、多くの学術活動に深刻な影響を与えました。国際的な交通や通信が寸断され、物資の供給も滞る中で、雑誌の継続的な刊行は困難となりました。その結果、『Mathesis』は1915年をもって一時的に刊行を停止せざるを得なくなりました。これは、ベルギー数学界にとっても大きな損失でした。

戦後の再開とベルギー数学協会

第一次世界大戦が終結し、ベルギーも復興の道を歩み始めると、学術活動も徐々に再開されました。戦後のベルギー数学界において特筆すべき出来事として、1921年にBelgian Mathematical Society（ベルギー数学協会）が設立されたことが挙げられます。この新しい学術団体は、ベルギーの数学研究を組織化し、振興するための中心的な役割を担うことになります。『Mathesis』の復刊も、この協会の設立と密接に関連していました。協会の枠組みの中で、中心的人物であったノイベルグは、アドルフィ・ミヌール（Adolphe Mineur）と共に『Mathesis』の再開に尽力します。そして、1922年、『Mathesis』はBelgian Mathematical Societyの発行誌として、無事に刊行を再開しました。この再開は、ベルギー数学界の復興と発展を象徴する出来事でした。

長期にわたる刊行と終焉

再開された『Mathesis』は、その後長期にわたり安定した刊行を続けました。Belgian Mathematical Societyの中核的な機関誌として、ベルギー国内だけでなく、国際的な数学界においても一定の存在感を示しました。しかし、時代の変化と共に学術出版を取り巻く環境も変化し、新しい専門誌の登場や研究手法の多様化なども進みました。長い歴史を持つ『Mathesis』も、やがてその役割を終える時を迎えます。1965年、『Mathesis: Recueil Mathématique』は、その約85年にわたる歴史に幕を下ろしました。前身誌の期間を含めると、約90年にわたりベルギー数学界に貢献したことになります。

『Mathesis』は、その創刊から終刊に至るまで、多くの著名な数学者によって支えられ、数学の発展と普及に寄与しました。特に、創刊者であるマンションとノイベルグの功績は大きく、この雑誌を通じて多くの数学者に影響を与えました。ベルギー数学史を語る上で、『Mathesis』が果たした役割は非常に大きいと言えるでしょう。

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