Microsoft Officeには、文書作成、データ分析、プレゼンテーションなど、様々なタスクを効率化するための多種多様なツールが含まれています。これらのツールは、ユーザーの生産性向上を支援するために、長年にわたり進化を続けてきました。
コアツール
Delve: Office 365環境で利用可能なDelveは、ユーザーが関連性の高い情報にアクセスできるように設計されたツールです。メール、会議、連絡先、ソーシャルネットワーク、ドキュメントなど、OneDriveやOffice 365サイトに保存されたコンテンツを横断的に検索・管理できます。機械学習と
人工知能を活用し、ユーザーにとって最も重要なコンテンツを優先的に表示します。モバイル版アプリも提供されており、場所を選ばずに情報にアクセスできます。
Graph: Microsoft Graphは、ExcelやAccessなどのOfficeアプリケーションで、グラフやチャートを作成するためのツールです。以前はMicrosoft Chartと呼ばれていました。OLEアプリケーションとして提供され、
Visual BasicからOLEオブジェクトとしても利用可能です。Office 2003以前のバージョンでは、グラフ表示の基本コンポーネントとして使われていました。Office 2007以降では、新しいグラフエンジンが導入され、3Dレンダリング、透明度、影などの高度な書式設定、レイアウトカスタマイズが可能になりました。互換性維持のため、現在でも挿入メニューから利用できます。
WordArt: ワードアートは、テキストに装飾を施すためのツールです。テクスチャ、アウトライン、影などの特殊効果を使い、標準フォントでは表現できないような装飾テキストを作成できます。Microsoft Wordだけでなく、Excel、PowerPoint、Publisherでも利用可能です。Office 2010以降では、テキストに影、面取り、光彩、ぼかし、反射などの書式効果を適用することも可能です。Office 2007で再設計され、より多くのスタイルと効果が追加され、テキストボックスにも適用できるようになりました。
SmartArt: SmartArtは、PowerPoint、Word、Excel、Outlookのリボンに配置された図形描画ツールです。リスト、プロセス、サイクル、階層などのカテゴリに、115個のテンプレートが用意されています。ユーザーはテキストを入力するだけで、図形とテキストが自動的に最適化されます。色、フォント、3D効果などをカスタマイズでき、視覚的に魅力的な図表を作成できます。SmartArtはOffice 2006から搭載されています。
廃止された機能
Microsoft Officeには、過去に提供されていたものの、現在は廃止された機能も存在します。これらの機能は、技術の進歩やユーザーニーズの変化に伴い、新しい機能に置き換えられました。
Binder: Microsoft Binderは、異なる種類のOLEオブジェクトを一つのファイルにまとめるためのアプリケーションでした。Office 95からOffice 2000まで提供されていましたが、その後廃止されました。ファイル
拡張子は.OBDで、Office Binderテンプレートは.OBTでした。Office 2003まではアドインをインストールすることで開くことができましたが、現在は利用できません。
Data Analyzer: Microsoft Data Analyzerは、データ分析と視覚化のためのツールでした。Office XPに同梱されましたが、現在は提供されていません。SQL Server Analysis Servicesと統合されており、生成されたレポートとグラフは、HTML、Excel、PowerPoint形式で保存できました。最終バージョンは3.5です。
Document ScanningとDocument Imaging: Microsoft Office Document Scanning(MODS)は、Office XPで導入されたスキャンとOCRアプリケーションです。紙文書をスキャンしてデジタル化し、OCRでテキストを抽出できました。
Microsoft Office Document Imaging(MODI)は、スキャンした文書の編集と
注釈付けのためのツールで、Office XPからOffice 2007まで提供されていました。Office 2010以降は使用できなくなりましたが、以前のバージョンのOfficeからインストールすることで利用できました。MODIは
TIFF形式のファイルを生成しますが、標準的な
TIFFとは異なり、互換性に問題が生じることもありました。
Office Webコンポーネント: Office Web Components(OWC)は、Webページやアプリケーションでインタラクティブなデータ表示を行うためのOLEコンポーネントでした。Office 2000、XP、2003で利用できましたが、Office 2007で廃止されました。Spreadsheet、Chartspace、Pivot table、Data source componentなどが含まれていました。現在では、サードパーティ製品、Excel Services、Visual Studio Tools for Officeなどを組み合わせることで、同様の機能が実現できます。
その他のツール
クリップオーガナイザ: 画像、音声、ビデオなどのメディアクリップを管理するツールです。Officeドキュメントにクリップを簡単に追加できます。
Microsoft Office Onlineサイトから、さらに多くのクリップを利用できました。
数式エディタ: WYSIWYG環境で数式を作成するためのツールです。Design Science社によって開発され、
MathTypeの簡易版として提供されていました。Office 2007以降、数式作成の既定の方法はリボンからの操作に変わり、古い数式エディタは互換性維持のために残されるのみとなりました。
技術的な側面
Microsoft Officeツールは、COM(
Component Object Model)などの技術を利用して、他のアプリケーションとの連携を可能にしています。MODIやOWCのようなツールは、COMインターフェースを通じて、開発者がプログラムから操作できるようになっていました。
Microsoft Officeの進化は、これらのツールの変遷をみても明らかです。ユーザーのニーズに合わせ、柔軟に対応してきた歴史があります。