Mnet投票操作問題

Mnet投票操作問題とは、韓国のエンターテインメント企業CJ ENM傘下の音楽専門チャンネルMnetが制作・放送した複数のオーディション番組シリーズにおいて発生した、視聴者による投票結果の不正な操作や改ざん、いわゆる「選挙詐欺」を含む重大なスキャンダルを指します。この問題は特に、多くのファンが「国民プロデューサー」として投票に参加し、アイドルグループのメンバーを選抜する形式で人気を博した『PRODUCE 101』シリーズおよび『アイドル学校』に関連して表面化しました。

問題の背景

Mnetは、2009年に放送を開始したリアリティオーディション番組『スーパースターK』で大きな成功を収めました。その経験を活かし、2016年には新たな形式のオーディション番組として『PRODUCE 101』をスタートさせます。この番組は、総勢101人の練習生の中から、視聴者による投票のみで選ばれた11人が期間限定のガールズグループとしてデビューするというコンセプトで、多くの注目を集めました。初代グループであるI.O.Iの活動が成功を収めたことで、シリーズは継続されることとなり、独自のフランチャイズを確立しました。

その後、『PRODUCE 101 SEASON2』（2017年）でボーイズグループWanna One、『アイドル学校』（2017年）でガールズグループfromis_9、『PRODUCE 48』（2018年、日本のAKB48グループとのコラボレーション）でガールズグループIZONE、『PRODUCE X 101』（2019年）でボーイズグループX1がそれぞれ結成されました。これらの番組は、視聴者が直接アイドルの誕生に関わるという参加型のスタイルが熱狂的な支持を得る一方で、その透明性に対する潜在的な懸念も内包していました。

騒動の経緯

事態が明るみに出たのは、2019年7月に放送された『PRODUCE X 101』の最終回でした。番組内で発表された最終メンバーの順位と、それに紐づく得票数に、不自然な共通パターンが複数存在することが一部の視聴者によって指摘され、投票結果が不正に操作されたのではないかという強い疑惑が生じました。

この疑惑に対し、視聴者らは番組を制作したMnetに対する不信感を募らせました。特に、オンサイトテキスト投票には1票あたり100ウォン（当時のレートで約10円）の費用がかかっていたため、正当な対価を支払って投票したにも関わらず結果が歪められたことに対する怒りは大きく、同年8月1日には、272人の視聴者がMnetを相手取って告訴に踏み切りました。これを契機に、ソウル地方警察庁による本格的な捜査が開始されました。

捜査が進むにつれて、番組制作陣による組織的な投票操作の事実が明らかになっていきました。2019年11月5日には、『PRODUCE 101』シリーズのチーフプロデューサーであったアン・ジュニョンと責任者であったキム・ヨンボムが逮捕される事態に発展します。アンPDは、その後の調べや裁判において、『PRODUCE 101』シリーズの全4シーズン全てで最終的なメンバー選考の順位が操作されていたことを自ら認めました。

同年12月3日、アンPD、キムCPに加え、一部の芸能事務所関係者ら計8名が、業務妨害、詐欺、さらには不正な便宜供与を巡る贈収賄などの容疑で起訴されました。関連する裁判は、同年12月20日に開始されました。事件の重大性を受け、番組を運営するCJ ENMは、同年12月30日に代表者が公式に謝罪会見を開き、事態の収拾を図る姿勢を見せました。

事件の影響

一連の投票操作問題は、直接的な影響を被ったグループに深刻な打撃を与えました。特に、『PRODUCE X 101』から誕生したX1は、活動期間が大幅に制限され、最終的には解散に追い込まれました。『PRODUCE 48』から誕生したIZONEも、一時的に活動休止を余儀なくされました（後に活動再開しましたが、予定されていた活動期間満了に伴い解散）。

また、このスキャンダルは、Mnetが制作する他のオーディション番組や、広くK-POP業界におけるオーディション番組の透明性や公正性に対する世間の信頼を大きく揺るがしました。多くの視聴者やファンは失望し、番組制作体制への疑問を投げかけました。結果として、Mnetは番組制作において信頼回復に向けた様々な措置を講じる必要に迫られ、韓国芸能界全体にも大きな影響を残す出来事となりました。

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