MultiVersion Concurrency Control

マルチバージョン コンカレンシー コントロール (MVCC)

マルチバージョン コンカレンシー コントロール（MVCC）は、データベース管理システムにおける効率的なトランザクション管理技術の一つであり、特に同時に複数のユーザがデータを操作する環境で活躍します。この技術は、同時実行性を維持しつつ、データの整合性を保証する役割を果たしています。日本語では「多版型同時実行制御」や「多重バージョン並行処理制御」とも呼ばれることがありますが、一般的に「マルチバージョン」と略されることがあります。

MVCCの動作原理

MVCCの最大の特徴は、書き込み操作が発生している間でも、他のユーザが読み取り操作を行うことができる点です。具体的には、書き込みトランザクションが開始されると、その時点のデータのスナップショットが作成され、他のユーザはこのスナップショットを基にデータを読み取ることとなります。これにより、書き込み中のデータに対する読み取り要求が発生しても、整合性を保った状態で応答することが可能です。

この同時実行性を実現するためには、MVCCは全ての操作の順序を正確に記録する必要があります。これが行われることで、異なるトランザクションが同時に実行された場合でも、矛盾のないデータの状態を維持することが可能になります。具体的には、タイムスタンプやトランザクションIDを活用して各更新処理が管理されます。

加えて、MVCCはSQL標準で定義されたトランザクション分離レベルの一つ、特に「Read Committed」に該当します。これは、コミットが完了したデータのみが読み取り可能であることを意味し、並行処理の中でもデータの一貫性を保持するための重要な仕組みです。

MVCCの歴史

MVCCの概念は、1981年にPhilip A. BernsteinとNathan Goodmanによって提唱され、ACM Computing Surveysという学術誌に掲載されました。これにより、今までのデータベース管理の枠を超えた新たなアプローチとして広まり、以降多くのデータベースシステムに採用されるようになりました。

MVCCを採用するデータベース

MVCCはさまざまなデータベース管理システムで採用されています。具体的には、以下のデータベースがMVCCの考え方を取り入れていることで知られています。

• - RethinkDB (1.0以降)
• - Berkeley DB
• - DB2 (9.7以降, CS with CC)
• - Firebird
• - H2 Database
• - InterBase
• - Microsoft SQL Server (2005以降のREAD_COMMITTED_SNAPSHOT)
• - MySQL (InnoDBエンジン使用時)
• - Oracle Database (Oracle 4以降)
• - SAP IQ
• - PostgreSQL (6.5以降)
• - Zope Object Database
• - OrientDB

また、MVCCの考え方は、Clojureのソフトウェアトランザクショナルメモリや各種バージョン管理システムなど、一部のソフトウェアでも取り入れられています。

関連項目

MVCCに関連する項目としては、スナップショットアイソレーション、シリアライズ可能アイソレーション、時刻印ロック、リード・コピー・アップデートなどが挙げられます。これらはすべて、データの整合性やトランザクションの管理に深く関与しており、MVCCと相互に関係しています。従って、これらの技術を理解することで、MVCCの有効性やその利用場面をより深く認識することができるでしょう。

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