Musl

musl（マッスル）は、Rich Felker氏によって開発された、Linuxカーネルを基盤とするオペレーティングシステム向けの標準Cライブラリです。MITライセンスの下で公開されており、その設計目標は、クリーンで効率的、かつ標準規格に準拠したCライブラリの実装を提供することにあります。

muslの特徴

muslは、既存の標準Cライブラリ実装が抱える問題点を克服するために、ゼロから設計されました。特に以下の点に重点が置かれています。

効率的な静的リンク: muslは、静的リンクを効率的に行えるように設計されており、これによりアプリケーションは単一のポータブルバイナリとして配布することが可能になります。これにより、大きなサイズオーバーヘッドを避けることができます。
実時間品質の堅牢性: レースコンディションやリソース枯渇による内部障害など、既存の実装で発生しうる最悪のケースを回避し、高い信頼性を実現しています。
動的ランタイムの安定性: 動的ランタイムは単一のファイルで提供され、安定したABI（アプリケーションバイナリインターフェース）を維持しています。これにより、レースフリーのアップデートが可能となり、システム全体の安定性が向上します。
標準規格への準拠: POSIX:2008およびC99の標準規格に準拠しており、高い互換性を持っています。また、Linux、BSD、glibcの非標準関数も実装されており、幅広い環境で利用できます。

muslの利用

muslは、多くのLinuxディストリビューションで標準Cライブラリとして採用されています。主なディストリビューションとしては、以下のようなものが挙げられます。

Alpine Linux
Dragora GNU/Linux-Libre
Gentoo Linux
Sabotage
Morpheus Linux
Void Linux

これらのディストリビューションでは、muslが標準Cライブラリとして利用されており、システム全体の軽量化やセキュリティ向上に貢献しています。

glibcとの互換性

glbcにリンクされているバイナリは、gcompatを使用することでmuslベースのディストリビューションでも実行することができます。これにより、glibcに依存したアプリケーションでも、musl環境で動作させることが可能です。これにより、既存のアプリケーション資産を有効活用しながら、muslのメリットを享受することができます。

まとめ

muslは、高い効率性と堅牢性を兼ね備えた標準Cライブラリであり、特に組み込みシステムやリソース制約のある環境でその価値を発揮します。標準規格への準拠と幅広いプラットフォームへの対応により、開発者にとって魅力的な選択肢となっています。また、静的リンクの容易さから、アプリケーションの配布や移植も容易になります。

脚注

muslに関する詳細は、以下の公式ウェブサイトや関連資料をご参照ください。

関連項目

標準Cライブラリ
glibc
POSIX
C99
静的リンク
動的リンク

外部リンク

公式ウェブサイト
Comparison of C/POSIX standard library implementations for Linux - Linux向けの標準Cライブラリ実装の比較
* Project:Hardened musl - Gentoo Wiki

もう一度検索