Mutt

Muttは、1995年にマイケル・エルキンスによって開発されたテキストベースのUNIX環境向けメールクライアントです。GNU GPLライセンスの下で公開されており、その柔軟性と高度なカスタマイズ性が特徴です。当初はメーラーelmに似たインターフェースを持っていましたが、開発が進むにつれてslrnのようなスタイルへと変化しました。

主な特徴

高い互換性: MuttはmboxやMaildirなど、多くのメールファイル形式に対応しています。POP3、IMAP、NNTPといった各種プロトコルをサポートし、MIME形式も扱えます。特にPGP/GPGやS/MIME|S_MIMEといった暗号化技術との親和性が高く、セキュアなメール通信を可能にします。
メール送信機能: 初期のMuttにはメール送信機能がありませんでしたが、バージョン1.5.15以降、SMTP機能が追加され、メールの送受信がMutt単体で完結するようになりました。
カスタマイズ性: Muttの大きな特徴の一つが、その高度なカスタマイズ性です。数百に及ぶ設定項目やコマンドが用意されており、色設定、レイアウト変更、キーバインドのカスタマイズ、キーボードマクロの作成など、細かい部分まで調整できます。また、標準機能に加えて、多数のパッチや拡張機能が提供されており、例えばNNTP対応やサイドバー表示などを実現できます。
キーボード操作: Muttはマウス操作を必要とせず、キーボードのみで操作できます。メーリングリストでの長い議論を追いかけるためのスレッド表示機能も搭載しています。また、メール作成時には外部のテキストエディタを利用する点が、内部エディタを起動するタイプのメーラーとは異なります。

日本語対応

初期のMuttは日本語メールの扱いに課題がありましたが、1998年頃に日本語対応パッチが登場し、利用されるようになりました。その後、開発版1.3系列以降では、日本語文字コードなどのマルチバイト機能が公式版にも組み込まれました。これにより、公式版のMuttでも日本語メールを扱えるようになりました。しかしながら、日本語圏特有のメール慣習や、MIMEなどの国際標準に準拠しないMUAも存在するため、本家に取り込まれない日本語パッチも存在します。主要な日本語パッチである`assumed_charset`機能は、2007年にBrendan Cullyが主導権を継いだ際に公式に取り込まれました。

Mutt Sucks Less

Muttの開発者たちは、「All mail clients suck. This one just sucks less（あらゆるメールクライアントはクソだが、こいつのクソ度はちょっとだけマシ）」というスローガンを掲げています。この言葉は、Muttが完璧ではなく、他のメールクライアントと同様に欠点を持つことを認めつつ、それでも他のものよりもわずかに優れているという謙虚な姿勢を示しています。この「foo sucks less」という表現は、ハッカーコミュニティでは一種の敬意を払ったジャーゴンとして認識されています。

まとめ

Muttは、その高度なカスタマイズ性、多様な機能、そしてテキストベースの効率的な操作性によって、長年にわたり多くのユーザーに愛用されてきたメールクライアントです。日本語対応も進み、現代のメール環境でも十分に利用可能です。設定は複雑な側面もありますが、それを乗り越えることで、自分にとって最適なメール環境を構築できるでしょう。

外部リンク

Mutt（日本語版）
Mutt公式サイト
Mutt公式サイト内のWiki
comp.mail.mutt Usenetのニュースグループ
Mutt Primer
Mutt on Windows - ウェイバックマシン（2002年6月9日アーカイブ分）

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