NAHT

NAHT：日本のポストハードコアシーンを彩ったバンドの軌跡

NAHTは、1995年に東京で結成されたオルタナティブロックバンドです。Volume DealersやGod's Gutsといった東京のハードコアバンドのメンバーによって結成され、日本のアンダーグラウンドミュージックシーンで重要な役割を果たしました。

結成と初期活動

バンドの中核メンバーである河合盛樹（ギター、ボーカル）と笠井隆洋（ドラム）は、God's GutsやVolume Dealersといったバンドでの活動経験を経てNAHTを結成しました。河合は札幌出身で、高校卒業後に上京し、様々なバンドで活動した後、Volume Dealersにベーシストとして加入しますが、ギターへの転向を経てNAHTを結成することになります。笠井はVolume Dealersとのアメリカツアーをきっかけに河合と親交を深め、NAHTに参加しました。

初期のNAHTは、吉村秀樹（bloodthirsty butchers）プロデュースによるデモカセットを発表、その高い評価を受けて、1996年のfugazi来日公演のオープニングアクトに抜擢されます。その後、自主レーベルからのリリースや、精力的なライブ活動を展開しました。特に、下北沢シェルターで17回にわたって開催された自主企画「Learn it from Lone」は、バンドの活動における重要な拠点となりました。この企画では、札幌のバンドcowpersを7回に渡りゲストとして招くなど、地域を超えた交流も積極的に行っていました。

ポストハードコアシーンへの影響と海外進出

NAHTの音楽性は、ポストハードコアというジャンルに分類されることが多く、日本のポストハードコアシーンの発展に大きく貢献しました。複雑なリズム構成や不協和音といった特徴的なサウンドは、しばしばポストハードコア音楽の特徴として取り上げられ、河合自身も積極的にディスコードなどの関連情報を発信していたことから、NAHTは日本のメディアにおけるポストハードコア紹介の加速に貢献しました。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて、NAHTは海外のバンドとの交流も積極的に行っていました。Kerosene 454、Bluetip、Sweetbelly Freakdownといったディスコード関連のバンドとのツアーや、アメリカ・サンディエゴのRocket from the Cryptとの共演など、活発な活動を展開しました。2000年にはアメリカ・ワシントンでセカンドアルバムをレコーディングし、2001年にはBurning Airlinesのアメリカ東海岸ツアーにも参加。Hey MercedesやDeath Cab for Cutieといった人気バンドとの共演を果たしました。このツアーに先駆け、アメリカDeep Elmレーベルのコンピレーションアルバム『Emo Diaries』にも参加しています。

音楽性とメンバーチェンジ

NAHTは、活動期間中に複数のメンバーチェンジを経験しました。特に、ギタリスト八木の脱退をきっかけに、2000年にはバイオリンを導入するという大胆な試みも行っています。これは、アメリカ各地のインディーロックシーンで弦楽器の導入が盛んになる先駆けとなる取り組みでした。その後、ツインギター編成に戻したり、日本語詞の楽曲を取り入れたりと、積極的に音楽性の変化を試みましたが、2003年には活動を一時中断します。

2005年にスリーピースバンドとして活動を再開したNAHTは、2007年のアルバムではシンセサイザーを導入するなど、新たなサウンドの探求を続けました。しかし、2009年10月23日、惜しまれつつも解散を発表しました。

まとめ

NAHTは、日本のオルタナティブロックシーン、特にポストハードコアシーンに多大な影響を与えたバンドです。その音楽性、活動、そしてメンバーチェンジといった様々な要素が、日本のインディーロック史に刻まれた重要な存在といえます。彼らが築き上げたサウンドと精神は、多くのミュージシャンに影響を与え続け、日本の音楽シーンに大きな足跡を残しました。 メンバーそれぞれの才能と情熱、そして時代背景が複雑に絡み合い、NAHTという唯一無二のバンドが誕生し、そして幕を閉じました。彼らの音楽は、これからも多くのリスナーを魅了し続けるでしょう。

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