NHKラジオ国際放送での不規則発言

NHKラジオ国際放送における不規則発言問題

2024年8月19日、NHKワールド・ラジオ日本とNHKラジオ第2放送で放送された『中国語ニュース』において、中国籍の外部スタッフが放送原稿にない不適切な発言をするという問題が発生しました。このスタッフは、靖国神社の石柱への落書きに関するニュースを読み上げる際、約20秒間にわたり、尖閣諸島の領有権に関する中国側の主張や、南京事件、慰安婦問題、731部隊に関する見解を一方的に述べました。これらの発言は、日本政府の公式見解とは異なるものであり、放送原稿にも記載されていませんでした。また、放送原稿にはない「軍国主義」「死ね」といった言葉も加えていました。

問題の概要

問題発言を行ったのは48歳の男性で、2002年からNHK国際放送関連の業務に従事していました。放送当時は、NHKグローバルメディアサービスを通じてNHKと業務委託契約を結び、NHK原稿の中国語訳と生放送での読み上げを担当していました。NHKはこの事態を重く受け止め、関連団体を通じて当該スタッフに厳重抗議するとともに、8月21日付で契約を解除しました。

NHKの対応

NHK会長の稲葉延雄は、8月22日に自民党の情報通信戦略調査会に出席し、この問題について「国際番組基準に抵触する極めて深刻な事態」と謝罪しました。また、調査会では「放送法違反の案件で非常に深刻」との指摘もなされました。NHKは8月26日に総合テレビとラジオ第1で5分間の謝罪放送を行い、事態の収束を図りました。

9月10日、NHKは国際放送担当の理事である傍田賢治が同日付で辞任することを発表しました。また、稲葉会長、井上副会長、山名専務理事、中嶋理事、そして中国人スタッフと委託契約を結んでいたNHKグローバルメディアサービスの幹部2名が、役員報酬の50％を1ヶ月自主返納しました。さらに、国際放送局長ら5名が減給などの懲戒処分を受けました。NHKは同日、中国人スタッフの発言が「放送の乗っ取りとも言える事態」であり、「事案発生時の即時対応や視聴者・国民への説明が不十分であった」とする調査結果を公表しました。総務省も9月11日に「放送法の規定に抵触すると認められ、看過できない」としてNHKに注意する行政指導を行いました。

その後の動き

問題発言を行ったスタッフは、SNSなどの書き込みから既に中国へ帰国しているとされています。このスタッフは、NHKでの待遇や勤務条件に不満を抱えており、自身の個人情報が特定された場合に中国政府から攻撃されるリスクがあるとして不安を訴えていたとされています。

NHKは、当該スタッフの行為が放送への信頼を失墜させる不法行為であるとして、1100万円の損害賠償を求めて提訴しました。また、刑事告訴も検討しているとしています。さらに、再発防止策として、生放送を原則として事前収録に切り替え、AI音声の導入も検討しています。

まとめ

この問題は、NHKの国際放送におけるガバナンスの甘さ、そして外部スタッフへの管理体制の不備を露呈しました。NHKは、再発防止に向けた具体的な対策を講じるとともに、放送に対する信頼回復に努める必要があります。また、今回の出来事は、放送における正確性や公平性の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

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