NHK浜松支局

NHK浜松支局は、静岡県浜松市中央区に所在する、NHK静岡放送局の支局です。主に遠州地方（静岡県西部）における報道取材活動を担っています。その歴史は、かつて独立した放送局であった「浜松放送局」に遡ります。浜松はまた、1926年に高柳健次郎博士が日本で初めてテレビジョン実験に成功した地としても、日本の放送史に名を刻んでいます。

沿革

浜松におけるNHKの歩みは、1933年 7月20日に社団法人日本放送協会浜松放送局として開局したことに始まります。当初は遠州地方に向けたラジオ放送（第1放送、呼出符号JODG）を届け、その後、第2放送（1948年、呼出符号JODC）、総合テレビジョン（1959年、呼出符号JODG-TV）、教育テレビジョン（1960年、呼出符号JODC-TV）とサービスを拡充しました。教育テレビは、開始当初名古屋放送局からの番組を受けていましたが、1962年からは静岡放送局からの伝送に変更されました。

1988年 7月22日、NHKの組織再編により、浜松放送局は独立局の地位を失い、静岡放送局の支局へと位置づけが変更されました。これにより、独自の放送送出機能は縮小されましたが、会館閉鎖まで比較的本格的なスタジオ設備を維持していた点は、他の支局と比較した際の特徴でした。

支局降格後も、かつて浜松放送局の建物である「日本放送協会浜松放送会館」（浜松市中央区下池川町）には、以下の各部門が置かれていました。

静岡放送局企画総務分室：支局に関する事務を担当
静岡放送局放送部浜松報道拠点：遠州地方のニュース取材拠点
静岡放送局営業部浜松分室：受信料関連業務を担う
静岡放送局技術部浜松分室：放送設備の維持管理や中継局対応を行う

浜松音楽ライブラリー

旧浜松放送会館に置かれていた施設の中でも特筆されるのが、NHKアーカイブス浜松音楽ライブラリーです。これは2000年頃に設置され、NHKが収集した放送用音源のうち、東京や川口に収蔵しきれないアナログ媒体、特にレコード類を保管する拠点でした。最盛期には、SP盤、LP盤、EP盤といったアナログレコードを合計約34万枚も所蔵し、日本の放送局としては最多であり、国立国会図書館とも比肩する国内最大規模と言われました。

ライブラリーのルーツは、1951年開始の「音のライブラリー」に遡ります。歴史的に貴重な音源も多く、玉音放送の音源もコレクションの一部でした。主に1985年頃までに収集された、音楽や演芸に関する音源が保管されており、亀淵昭信氏が日本の音楽ライブラリーとして随一と評しています。このライブラリーは、「今日は一日“浜松アーカイブス”三昧」などの番組で度々紹介されました。

会館閉鎖と現在の機能

長年使用されてきた浜松放送会館は、建物の老朽化が進んでいたこと、そして切迫する南海トラフ地震への対策のため、静岡放送局の新会館移転に合わせて閉鎖が決定されました。

機能移転は段階的に進められ、2016年10月には報道拠点が浜松アクトタワー内へ移転。2017年末には音楽ライブラリーが廃止され、音源は全てアーカイブス川口本館へ移送。2018年2月には営業部業務も静岡放送局本体に統合されました。

そして、2018年 3月12日の静岡放送局新会館運用開始に伴い、浜松放送会館はその歴史に幕を下ろしました。これにより、浜松支局の主な機能は、アクトタワー内の報道拠点と、旧会館敷地の送信施設に集約されました。かつてあった第1・第2放送の呼出符号（JODG, JODC）も廃止され、浜松は名実ともに静岡放送局の完全な中継局となりました。

送信施設

現在、浜松地域へのNHK放送波は、旧浜松放送会館敷地の鉄塔から主に送信されています。ここからは、デジタルテレビ放送（総合 20ch、Eテレ 13ch）とFM放送（82.1MHz）が送信されており、テレビが1kW、FMが250Wです。この鉄塔はNHKだけでなく、静岡県内の民放テレビ局も共同で利用しています。一方、AM放送（第1 576kHz、第2 1521kHz）は、別の送信所からそれぞれ1kWで放送されています。

現在のテレビ、AM、FM放送は、全て静岡放送局の中継局であり、浜松支局固有の呼出符号はありません。かつてアナログ放送や支局降格後のAM放送には呼出符号がありましたが、これらは廃止されています。

リポート時のクレジットは「浜松報道室」が慣例でしたが、現在は「浜松支局」が一般的です。

もう一度検索