NIAGARA MOON

大滝詠一『NIAGARA MOON』：ノベルティ・サウンドの万華鏡

『NIAGARA MOON』は、1975年5月30日にリリースされた大滝詠一の2作目のスタジオ・アルバムです。このアルバムは、彼が自身のレーベル、ナイアガラ・レーベルから発表した最初のソロ作品であり、大滝詠一の音楽性がより鮮明に打ち出されています。

制作背景

このアルバムが制作されるきっかけとなったのは、はっぴいえんど時代の盟友である細野晴臣からの指摘でした。前作『大瀧詠一』がメロディー重視の楽曲とノベルティ色の強い楽曲が混在している点を指摘され、どちらかの方向に特化するようアドバイスされたのです。大滝は、メロディー・タイプに傾倒すると“はっぴいえんど”の焼き直しになることを懸念し、本作ではノベルティ・タイプを追求することに決めました。この決断が、その後のナイアガラ・レーベルの方向性を決定づけ、数々のユニークな作品が生み出されることになります。

サウンドの特徴

『NIAGARA MOON』は、滝のSEで幕を開けます。これは、山下達郎が長野県の白糸の滝まで赴き録音したもので、アルバムに壮大な自然のイメージを付与しています。また、山下の声は30周年記念盤のエンディングで聞くことができます。楽曲は、コミカルな要素や実験的なサウンドが散りばめられており、大滝の音楽的な遊び心が随所に感じられます。

ジャケットとアートワーク

アルバムの帯には印象的なキャッチコピーが記載されています。また、裏ジャケットの大滝の写真は、レコード盤が新しくなるたびに撮り直されており、その都度、当時の服装が再現されていたというエピソードも残っています。

CD化とリマスター

1986年に初めてCD化された際、同時期のナイアガラ作品群の多くがリミックスされたのに対し、『NIAGARA MOON』はオリジナルマスターからCD化されました。2005年には、大滝自身によるリマスタリングが施された30周年記念盤が発売され、より高音質なサウンドで楽しむことができます。

ボーナストラック

CD選書シリーズや30周年記念盤には、ボーナストラックが追加収録されています。1976年のスタジオ・ライブ音源や未発表曲などが収録されており、アルバムの魅力をさらに深めています。特に、30周年記念盤に収録された「三文ソング」の別バージョンでは、エンディングに大滝の息子とアシスタントエンジニアの声が収録されており、ファンにとっては貴重な音源となっています。

『NIAGARA MOON』は、大滝詠一の音楽的な実験精神とユーモアが凝縮された作品であり、ナイアガラ・サウンドの魅力を存分に味わうことができる一枚です。

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