NO-NO-YESMAN

KAN 『NO-NO-YESMAN』

KANのディスコグラフィーにおいて、1987年10月25日に世に送り出された2枚目のスタジオアルバム、それが『NO-NO-YESMAN』（ノー・ノー・イエスマン）です。デビューから間もない時期に制作された本作は、前作からさらに音楽的な探求を深め、後の彼のキャリアを特徴づけることになる要素が随所に散りばめられています。

アルバムの特徴とサウンド

本作のサウンドは、KAN自身が操るアコースティックピアノやシンセサイザーを核としつつ、ジャンルにとらわれない多様な音楽性を追求しています。ポップスを基調としながらも、ファンクやロックのリズム、ジャズのコードワークなど、様々なエッセンスが融合。一曲ごとに異なる表情を見せる楽曲群が、アルバム全体にわたってリスナーを飽きさせません。特にキーボードサウンドの使い分けや、緻密なアレンジメントは、当時の彼のサウンドクリエイターとしての才能を明確に示しています。この時期のKANが目指した、メロディーとサウンドの両面でのオリジナリティが、本作において結実し始めています。

制作を支えたミュージシャンたち

『NO-NO-YESMAN』の豊かな音世界は、KAN自身のプロデュースに加え、レコーディングに参加した数多くの実力派ミュージシャンたちの貢献によって実現しました。

リズムセクションでは、ドラムスを秋山浩一と江口信夫、ベースをバカボン鈴木と有賀啓雄が担当。楽曲の土台となる強固なグルーヴを生み出しています。ギターパートには、エレキギターに林部直樹と窪田晴男、アコースティックギターに高山一也が参加。楽曲の彩りやドライヴ感を加えています。

キーボードパートは、KAN自身がアコースティックピアノ、シンセサイザーなどを担当するほか、松本晃彦がシンセサイザーとハモンドオルガン、矢代恒彦がシンセサイザーオルガンで参加。多層的なキーボードサウンドが、アルバム全体の雰囲気を大きく形作っています。特にハモンドオルガンの響きは、サウンドに温かみと奥行きを与えています。

さらに、ホーンセクションとして、トランペットに唐沢敏之（フリューゲルホルン兼任）と小林太、トロンボーンに村上こうよう、テナーサックスに鎌田一夫が参加し、楽曲にスケール感や華やかさを加えています。鎌田一夫はバッキングボーカルとしても、KAN、宮浦和美と共にコーラスワークを支えています。

本作のユニークな側面として、「Genuine Jazz Men」としてクレジットされた二本柳守（Dr）、塚田信市（B）、今田あきら（P）のゲスト参加が挙げられます。彼らの存在は、アルバムに本格的なジャズのフィーリングをもたらし、本作のジャンルレスな音楽性をさらに際立たせています。

また、プログラマーとして大竹徹夫がクレジットされており、当時の音楽制作における打ち込み技術やシンセサイザーの可能性が積極的に活用されていたことがうかがえます。

キャリアにおける位置づけ

『NO-NO-YESMAN』は、KANの初期キャリアにおける重要なマイルストーンです。デビューアルバムからの進化を示し、彼の音楽的な個性をより強固なものにしました。このアルバムでの経験やサウンドプロダクションへの試みは、後の彼のブレイクへと繋がる重要な布石となったと言えるでしょう。ファンにとっては、若きKANの情熱と才能が詰まった、特別な意味を持つ作品です。

結びに

多様な楽器と多くの名プレイヤーたちの力が結集して生まれた『NO-NO-YESMAN』は、1987年当時のサウンドを反映しつつも、KANの普遍的なメロディーセンスとアレンジ能力が光る作品です。発表から長い年月が経った現在も、その新鮮さと音楽的な魅力は失われていません。KANの音楽のルーツを探る上で、ぜひ聴いておきたいアルバムの一つです。

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