NOW (CKBのアルバム)

クレイジーケンバンド 19th Album『NOW』

『NOW』（ナウ）は、日本を代表するユニークな音楽集団、クレイジーケンバンドが2020年10月21日にリリースした、彼らにとって19枚目のオリジナル・フルアルバムです。このタイトルは、まさにリリース当時の「今」という瞬間におけるクレイジーケンバンドの音楽性を捉えようとする意欲を示すかのようです。

本作は、これまでのクレイジーケンバンドの多くのアルバムで見られた初回限定盤に付属していたDVDが設定されていません。音楽作品そのものに焦点を当てた、より純粋なCDまたはデジタルフォーマットでのリリース形態が採用されました。これは、サウンドそのものをじっくりと味わってもらいたいという、バンドの意志の表れとも解釈できます。

アルバムには合計で18曲が収録されており、非常にボリューム感のある内容となっています。これらの楽曲の大部分は、バンドのフロントマンである横山剣が作詞と作曲の両方を手掛けています。編曲については、横山剣とギタリストの小野瀬雅生が共同で担当するパターンが多く見られます。この二人のコラボレーションから生まれるアレンジは、クレイジーケンバンドならではの独特なグルーヴと世界観を形作っています。

本作に収録されている全トラックは以下の通りです。

1. サムライ・ボルサリーノ
2. ヨコスカ慕情
3. eye catch ＊ 昨日のつづき
4. IVORY
5. だから言ったでしょ
6. 9月21日
7. 紅葉
8. 月夜のステラ
9. 愛があるなら年の差なんて
10. 門松　remastering
11. 夢の夢　remastering
12. eye catch ＊ 夢のつづき
13. Hot Cha
14. テンプル通りのアイリーン
15. SSS
16. NOW
17. eye catch ＊ 昨日、今日、明日
18. Hello, Old New World

収録曲の中には、既に様々なメディアとのタイアップで発表されていた楽曲や、過去の音源を新たな形で収録したものも含まれています。例えば、「IVORY」は、テレビ朝日系列で長寿番組となっている『じゅん散歩』の2020年6月度および7月度のエンディングテーマとして使用され、LP仕様のシングルとしてもリリースされていました。また、「だから言ったでしょ」も同様にLP仕様として先行発表されていた楽曲です。

過去の楽曲が装いを新たに収録された例としては、「門松」と「夢の夢」があります。「門松」は、佐々木蔵之介と横山裕が主演した2020年公開の映画『嘘八百 京町ロワイヤル』の主題歌として書き下ろされた楽曲ですが、本作には新たにリマスタリング（remastering）されたバージョンが収められています。同様に、NHK Eテレで人気を博すアニメ『おじゃる丸』のエンディングテーマとして広く知られている「夢の夢」も、本作でリマスタリングが施された音源として収録されています。

アルバムの構成におけるユニークな点は、楽曲と楽曲の間に配置された短いインストゥルメンタル・トラック、「eye catch」の存在です。「昨日のつづき」、「夢のつづき」、「昨日、今日、明日」と名付けられた3つのeye catchは、アルバム全体の流れにメリハリを与え、まるで一本の映画やラジオ番組を聴いているかのような感覚をリスナーにもたらします。

また、アルバムの最後に収録されている「Hello, Old New World」は、多くの楽曲を手掛ける横山剣ではなく、ギタリストの小野瀬雅生が作詞・作曲の両方を担当した楽曲です。メンバーそれぞれの才能をフィーチャーするこうした試みも、クレイジーケンバンドの柔軟性と音楽的な幅広さを示しています。

『NOW』は、2020年という時代の空気を感じさせつつも、クレイジーケンバンドらしいタイムレスな魅力を放つ作品です。彼らの十八番とも言えるグルーヴィーなサウンドから、情感豊かなバラード、そして遊び心あふれるeye catchに至るまで、バラエティ豊かな楽曲群を通じて、常に進化し続ける彼らの「今」の音楽性を存分に堪能できるアルバムと言えるでしょう。

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