NTV (ロシア)

NTV（エヌテーヴェー）とは

NTV（露: Телекомпания НТВ）は、1993年に設立されたロシアのテレビ局です。局名であるНТВは「独立」「新しい」「我々の」などを意味するロシア語の頭文字に由来します。

歴史

設立当初のNTVは、政権批判も辞さない自由な報道姿勢を貫いていました。当時のエリツィン政権に対して、現地での状況をありのままに伝える報道を行い、エリツィンの支持率低下の一因になったとも言われています。

しかし、2000年にウラジーミル・プーチンが大統領に就任すると、NTVとその報道姿勢は大きな転換期を迎えます。オーナーであったウラジーミル・グシンスキーが横領と詐欺の疑いで逮捕され、保釈と引き換えにNTVの株式を手放すことになりました。その後、株式の過半数が国営企業であるガスプロム社の手に渡り、旧経営陣は一掃されました。プーチン大統領は、この一連の出来事について「報道の自由には健全な経営が必要」という持論を展開しました。

報道の自由を巡る闘い

経営陣の交代劇に対し、当時のNTV社長エブゲーニ・キセリョフやエレーナ・マシューク、タチアナ・ミトコーワなどのジャーナリストたちは、市民とともに大規模な抗議集会を開き、抵抗を試みました。キセリョフらはクレムリン宮殿でプーチン大統領に直接抗議する機会を得ましたが、プーチン大統領は当初なだめるような態度から一転、敵意に満ちた態度を示すようになったと言われています。

その後、グシンスキーの横領事件に関連して、NTVの記者たちは連日検察庁で取り調べを受けるなど、圧力が強まりました。その結果、NTV全社員約1000人のうち、キセリョフやマシュークを含む300人の社員がNTVを去ることになりました。ミトコーワは当初NTVを去るつもりでしたが、新経営陣からの説得を受け、最終的にNTVに残留しました。NTVに残ったミトコーワは報道部長に抜擢され、後にニュースの編集責任者にまで昇進しました。

一方、NTVを去ったキセリョフは別のテレビ局に移籍しましたが、そのテレビ局の放送免許が突然取り上げられるなど、困難な状況に直面しました。

メディア支配の現状

これらの出来事は、2008年にNHKスペシャル「言論を支配せよ “プーチン帝国”とメディア」で放送され、日本の視聴者にも大きな衝撃を与えました。NTVの一連の事件は、プーチン政権下におけるメディア支配の象徴的な出来事として捉えられています。プーチン政権発足後、ロシアでは政府によるメディア支配が進み、言論の自由、報道の自由が失われつつあるのが現状です。

関連情報

NTV公式サイト(ロシア語)
NTV X(旧Twitter)(ロシア語)
* ウラジーミル・グシンスキー

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