Nastran

Nastran (ナストラン) とは

Nastranは、主に構造解析を目的とした有限要素法（FEM）を用いたCAEソフトウェアです。もともとは、MSCソフトウェアによって開発・販売されていましたが、後に反トラスト法が適用され、複数の企業から様々なバージョンがリリースされています。

開発の歴史

Nastranの起源は、リチャード・マクニールとロバート・シュヴェンドラーが開発していたSADSAMという構造解析プログラムに遡ります。同時期に、アメリカ航空宇宙局（NASA）が構造解析プログラムの開発を求めていたため、彼らはMSCソフトウェアを設立し、1968年にNastranという名前でプログラムを納入しました。

1971年、MSCソフトウェアは「MSC.Nastran」としてこのプログラムの販売とサポートを開始しました。これは、商業的にリリースされた初の本格的な構造解析プログラムであり、機械、建築・土木、造船などの重工業分野で広く受け入れられ、構造解析ソフトウェアのスタンダードとしての地位を確立しました。これに伴い、MSCソフトウェアは世界各国に進出し、日本では1973年に最初の納入が行われ、1982年には日本法人が設立されました。

技術的な特徴

Nastranは、当初大型コンピュータでの利用が中心でしたが、メモリ領域が限られていた時代において、いかに少ないリソースで大きな計算を実行するかが重要な課題でした。そのため、Nastranは先進的な要素モデルを次々に導入し、より少ない積分点で計算できるように工夫を凝らしました。これらの特徴的な要素は、現在でも有限要素法において最も一般的な要素として使用されています。

さらに、非線形解析や流体、電場などへの対応を進め、汎用解析ソフトウェアとしての市場を拡大していきました。

反トラスト法と現在の市場

MSCソフトウェアは、業界内での地位を確固たるものにするため、1990年代以降、補完的な製品を開発する企業や競合する製品を開発する企業を次々と買収しました。しかし、2002年11月に、さらなる買収行為が連邦取引委員会によって反トラスト法違反とされ、訴訟が起こされました。この訴訟に対し、MSCソフトウェアは最新バージョンのNastranのコピーを他社へ渡し、販売を許可することで和解しました。

これにより、現在では、シーメンスPLMソフトウェアの「NX Nastran」やNEiソフトウェアの「NEi Nastran」など、複数のNastranが市場に存在しています。

NX Nastranは、独立系プリポスト・ソフトウェアであったフィーマップを買収し、GUIを大幅に強化したパッケージをリリースし、ハイエンドCAD市場への販売を強化しています。一方、NEi Nastranは、独自のプリポストに加え、ミドルレンジCADとして最大のシェアを持つSolidWorksと連携した「NEi Works」を提供し、ローレンジからミドルレンジの設計ソリューションにも展開しています。

MSC.Nastranを展開していたMSCソフトウェアは、株価の低迷から2009年7月にシンフォニー・テクノロジー・グループに買収されました。

まとめ

Nastranは、その歴史の中で構造解析ソフトウェアのデファクトスタンダードとなり、現在では複数の企業から提供されています。各社はそれぞれの強みを生かし、様々な市場ニーズに対応した製品を提供しています。ユーザーは、自身の環境や目的に合わせて最適なNastranを選択することが重要です。

外部リンク

エムエスシーソフトウェア株式会社
シーメンスPLMソリューションズ NX Nastran サイト
* デジタルソリューション株式会社 NEi Nastran サイト

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