Nuss法

Nuss法：漏斗胸と鳩胸に対する低侵襲手術

Nuss法は、胸郭の変形である漏斗胸と鳩胸を治療するための外科手術です。アメリカ合衆国の外科医、Donald Nuss氏が開発したこの方法は、世界中で広く普及しており、日本でも多くの医療機関で実施されています。従来の開胸手術に比べて、身体への負担が少なく、効果的な治療法として知られています。

手術方法

Nuss法は、胸部への小さな切開を2カ所行う低侵襲手術です。手術では、特殊な形状をした金属製のバーを使用します。このバーを、胸壁の裏側から挿入し、へこんでいる胸骨を押し上げて正常な形に矯正します。バーは、手術後2～3年間体内に留置され、その後、簡単な手術で取り除かれます。

バーの挿入には、内視鏡を用いるため、従来の開胸手術と比較して、傷跡が小さく済みます。肋軟骨の硬さなど、患者の状態によっては、追加の手術が必要となる場合もあります。その場合、胸の前面にも小さな傷跡が残りますが、それでも従来の手術に比べて、傷跡ははるかに小さく抑えられます。使用するバーの本数は患者によって異なり、最大で3本使用されることがあります。手術時間は、通常約2時間です。

合併症

Nuss法は低侵襲手術ですが、術後の合併症として、感染、気胸（肺に空気が漏れる状態）、バーへのアレルギー反応、バーのずれなどが報告されています。ただし、これらの合併症は比較的まれです。

術後の運動制限

手術後は、バーのずれを防ぐために、一定期間の運動制限が必要です。具体的な制限内容は、担当医の指示に従う必要があります。

再発の可能性

バーを取り除いた後、胸郭の変形が再発する可能性も報告されていますが、頻度は低いとされています。

日本におけるNuss法の普及

Nuss法は、植村貞繁医師によって日本に導入されました。植村医師は、メルボルン大学でNuss法を学び、1998年に国立岩国病院で日本初のNuss法による漏斗胸手術を実施しました。その後、川崎医科大学小児外科教授として、Nuss法の普及に大きく貢献し、現在では、多くの医療機関でNuss法が用いられています。植村医師は、1200例を超えるNuss法手術の実績を持ちます。

まとめ

Nuss法は、漏斗胸や鳩胸の治療において、低侵襲で効果的な手術方法です。傷跡が小さく、回復も比較的早いことから、患者さんのQOL（生活の質）の向上に大きく貢献しています。しかし、すべての患者さんに適用できるわけではなく、手術のリスクや合併症の可能性についても、十分に理解した上で、医師とよく相談して治療法を選択することが大切です。

参考文献

Protopapas, Aristotle D.; Athanasiou, Thanos (2008). “Peri-operative data on the Nuss procedure in children with pectus excavatum: independent survey of the first 20 years' data”. J Cardiothorac Surg 3 (40): 40. doi:10.1186/1749-8090-3-40. PMC 2474598. PMID 18601720. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2474598/
“Systematic review of surgical treatment techniques for adult and pediatric patients with pectus excavatum”. Journal of Cardiothoracic Surgery 9: 25. (2014). doi:10.1186/1749-8090-9-25. PMC 3922335. PMID 24506826. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3922335/

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