OKI (ミュージシャン)

OKI（加納 沖）

OKI、本名：加納 沖（1957年 - ）は、日本の音楽家であり、アイヌの伝統弦楽器であるトンコリの奏者として国際的に活躍している。その活動の中心は、彼が率いるOKI DUB AINU BANDであり、アイヌの伝統音楽を基盤に、ダブやレゲエ、ロック、アフロビートといった世界の多様なルーツ音楽の要素を融合させた独自のサウンドを創り出している。

生い立ちと背景

OKIは、北海道に生まれた。父親は著名な木彫家である砂澤ビッキ、母親は画家の山田美年子（加納美年子）である。その後、母親の再婚により、写真家・美術家の加納光於の養子となった。幼少期を北海道で過ごした後、神奈川県で育ち、神奈川県立茅ケ崎高等学校を卒業。東京芸術大学美術学部工芸科に進学した。大学在学中に、自身にアイヌの血が流れていることを知ることとなる。現在は活動の拠点として北海道当麻町に在住している。

音楽活動の始まり

音楽家としてのキャリアは、旭川市の川村カ子トアイヌ記念館館長であり親戚にあたる川村兼一から譲り受けたトンコリを独学で習得したことから本格的に始まった。トンコリの音色と、アイヌの伝統歌であるウポポに深く傾倒し、これらの伝統要素を現代的な音楽表現へと昇華させることを目指した。

1992年には、民族文化映像研究所にてドキュメンタリー映像の撮影に携わっており、この経験もまた彼のその後の表現活動に影響を与えていると考えられる。

独自の音楽スタイルとOKI DUB AINU BAND

OKIの音楽の最大の特徴は、アイヌの伝統音楽が持つ精神性と、世界のルーツ音楽が持つリズム感やグルーヴ感を融合させている点にある。自身のバンドであるOKI DUB AINU BANDでは、トンコリの演奏とボーカルを担当。アイヌ語の歌や伝統的なメロディーに、ダブのエフェクト、レゲエのリズム、ロックのエネルギー、アフロビートの熱狂などを大胆に取り入れている。この革新的なサウンドは、国内外の音楽シーンから注目を集め、2005年以降、OKI DUB AINU BANDは世界各国の主要な音楽フェスティバルに多数出演し、その存在感を確立した。

主な作品とプロデュース

1995年にファーストアルバム『カムイ コル ヌプルペ』を発表。このアルバムには、アイヌのエカシ（長老）の言葉にメロディーをつけた楽曲や、エカシとの共作によるアイヌ語の詩に曲をつけた楽曲などが収録されている。以降、精力的にアルバムをリリースしており、『HANKAPUY』（安東ウメ子との共演）、『DUB AINU』、『OKI DUB AINU BAND』、『SAKHALIN ROCK』、『HIMALAYAN DUB』など多数の作品がある。これまでに発表した作品の中から選曲したベストアルバム『熊出没』もリリースされている。

また、他のアイヌ系アーティストのプロデュースも手掛けており、特にアイヌの伝統歌ウポポのハーモニーを現代的に再構築する女性ヴォーカルグループ、マレウレウの音楽プロデューサーとして知られる。2012年のアルバム「もっといて、ひっそりね。」などをプロデュースした。安東ウメ子のアルバム『IHUNKE』、『UPOPO SANKE』でもプロデュースや共演を行っている。

これらの活動に対し、2008年には北海道文化賞奨励賞を受賞しており、その功績が認められている。

その他の活動

音楽活動以外にも、アイヌ文化に関連した多岐にわたる活動を行っている。絵本『カンナカムイと娘』では絵を担当。著作としては、アイヌ文化に関する論考を分担執筆している。また、ラジオ番組のパーソナリティを務めたり、テレビ番組にナレーションで参加するなど、メディアを通じて自身の音楽やアイヌ文化について発信している。息子のManawは、バンドASOUNDのドラマーとして活動しており、親子二代で音楽の道を歩んでいる。

アイヌ文化の継承と創造

OKIの音楽活動は、単に新しいサウンドを追求するだけでなく、アイヌの伝統文化を現代社会に適合させ、国内外に広く紹介する重要な役割を果たしている。伝統楽器であるトンコリの響きやウポポの歌声を現代の音楽スタイルと融合させることで、アイヌ文化の持つ力強さと美しさを表現し、次世代への継承と創造的な発展に貢献している。チカルスタジオを拠点に、彼は今日もアイヌの精神を宿した音楽を世界に向けて発信し続けている。

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