ONE (ASKAのアルバム)

ASKAのソロキャリアにおける4作目のオリジナルアルバムとして、『ONE』は1997年3月12日に東芝EMIから世に送り出されました。前作『NEVER END』から約2年を経て発表された本作は、2001年5月23日には再発売もされています。

本作の大きな特徴は、ASKAがイギリスへと渡り、現地のプロデューサーやミュージシャンと共に制作された点にあります。国際的な環境での共同作業から、新たな音楽的アプローチが生まれました。また、アルバムの構成においては、「人が最も心地よく聴ける時間」を追求するという明確な意図があり、収録楽曲数を当初から10曲に絞ることが決められていました。アートワークに使用された写真はベトナムで撮影され、写真家ハービー・山口氏が手掛けています。

収録曲とそれぞれの背景には、様々なエピソードやテーマが込められています。

収録曲解説

風の引力

1997年2月5日にリリースされたシングル「ID」のカップリングとして収録された楽曲です。この曲は、JAL STORY '97のイメージソングとして使用されました。

ONE

アルバムのタイトルチューンであり、後に1997年4月28日に6枚目のシングルとして独立してリリースされました。日本テレビ系水曜ドラマ『ガラスの靴』のオープニングテーマとして耳にした人も多いでしょう。共同制作者であるERVIN氏が何気なく口ずさんだ鼻歌のフレーズが、この曲が生まれるきっかけとなったとされています。

草原にソファを置いて

アルバム発売に先駆け、1996年12月25日放送のフジテレビ系特別番組『'96 夜のヒットスタジオ 超X'masデラックスin NY』でいち早く披露されたナンバーです。

バーガーショップで逢いましょう

この楽曲は、アルバム全体を通して聴くリスナーが楽しめるような、親しみやすいアクセントを加えたいという意図から制作されたと言われています。

僕はすっかり

当初は「コーナーボーイ」という仮題で一旦は制作が進んでいましたが、ASKA氏自身が納得できず、歌詞、メロディー、アレンジの全てを一からやり直して完成したという、こだわりの一曲です。

共謀者

物事を共に推し進める仲間やチームを「共謀している」というユニークな発想から名付けられたタイトルを持つ楽曲です。「どんな困難があろうとも臆することなく、自身の力を信じて突き進めば、必ず何かを成し遂げられる」という強いメッセージがテーマに込められています。後に、ASKA氏のコンサートツアーの模様を収めた映像作品のタイトルにも採用されました。

帰宅

ASKA氏が、ある朝、仕事を終えてスタジオから自宅へ向かう途中の情景や心に浮かんだ気持ちを忘れないようにと、車を停めてメモを取ったことが、この楽曲が生まれる出発点となったエピソードが残されています。

ブラックマーケット

非正規の流通、いわゆるコピー商品が案外身近なところで流通している現状をテーマにした楽曲です。この社会的なテーマを、あえてポップなメロディーに乗せて歌い上げている点が特徴です。

君が家に帰ったときに

入院中の少女と、彼女を見舞う少年という、恋人たちの関係性を描いた楽曲です。本作『ONE』に収録された曲の中でも、比較的オーソドックスな、普遍的なラブソングとして位置づけられています。

ID

アルバムに先立つ1997年2月5日にリリースされた、ASKA氏の5枚目のシングル表題曲です。フジテレビ系『木曜の怪談 ファイナル 「タイムキーパーズ」』のエンディングテーマ、そしてNECの企業CMソングとして使用され、広く知られました。

『ONE』は、ASKA氏のソロ活動における一つの到達点を示す作品であり、海外での制作経験や、収録曲数への意識的なアプローチなど、様々な試みが凝縮されています。各楽曲に込められた多様なテーマやエピソードを知ることで、より深く作品の世界観を楽しむことができるでしょう。

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