OZZ-5

OZZ-5 自律型水中航走式機雷探知機

OZZ-5は、日本の防衛省技術研究本部が開発した自律型の水中無人機（UUV）です。この機体は、特に探知が難しいとされる機雷、例えば海底に沈んでいる沈底機雷や、浅海域で泥中に埋もれている埋没機雷などを効率的に探知するために設計されました。

開発の背景

従来の機雷探知技術では、ステルス性の高い機雷や、海底に隠れた機雷の探知は非常に困難でした。そのため、機雷が敷設されている可能性のある海域に、艦艇が直接進入して捜索を行うことは危険を伴いました。そこで、安全な場所から遠隔で、広範囲を自律的に動きながら機雷を探知できる水中無人機の開発が求められました。

特徴

OZZ-5には、以下の様な高度な特徴があります。

低周波合成開口ソーナー（LFSAS）と高周波合成開口ソーナー（HFSAS）の搭載:
埋没機雷の探知に不可欠な低周波合成開口ソーナー（LFSAS）は、日本電気によって新規開発されました。これにより、埋没した目標物の情報だけでなく、分解能は低いものの、沈底機雷の画像情報も取得できるようになりました。
一方、高周波合成開口ソーナー（HFSAS）は、タレス製のSAMDISを採用しており、高分解能の合成開口画像を取得できます。これにより、海底の地形や目標物の詳細な情報を得ることが可能です。
これらの2周波の情報を統合することで、沈底機雷の同時識別など、より確度の高い機雷の探知・識別が実現しました。この2周波の合成開口ソーナーを同時に搭載した水中無人機は、世界で初めてです。
高い制御能力と安定した航走:
OZZ-5は、制御能力の高いX舵を採用し、前方・後方両方に操舵装置を配置しています。これにより、航走制御アルゴリズムによって姿勢変動を最小限に抑え、超低速でも安定した航走が可能です。
高精度な自己位置検出:
慣性航法装置（INS）とドップラー速度計（DVL）の情報を組み合わせたアルゴリズムにより、高精度な自己位置検出を実現しています。

運用方法

OZZ-5の運用は、まず安全な水域で、捜索海域の環境条件に基づいた航走計画を自動的に作成することから始まります。この計画に基づいて機体を投入し、機雷の捜索を行います。取得したデータは艦上装備で解析され、機雷の有無が確認されます。

開発と配備の経緯

OZZ-5の開発は、まず防衛省技術研究本部による「機雷探知機の研究」として2008年度から2010年度にかけて研究試作が行われ、2011年度には所内試験が実施されました。これにより、埋没機雷の探知技術や小型UUVへの適合性に関する知見が得られました。

その後、「自律型水中航走式機雷探知機の開発」として2013年度から2016年度にかけて試作・試験が行われ、自律型水中航走式機雷探知機が開発されました。2017年度に装備化され、2020年度の単価は13億8512万円（別途、初度費3億6839万円）です。

将来的には、もがみ型護衛艦への搭載が予定されており、運用時には直上で並走するUSV（無人水上艇）と音波を用いてデータをやり取りし、リアルタイムでのデータ提供が可能になる予定です。

さらに、「次世代機雷探知技術の研究」として、2020年度から2024年度にかけて研究試作、2024年度から2025年度にかけて所内試験が行われる予定です。この研究では、OZZ-5が捜索を終えた後にデータをアウトプットしてから艦上解析装置で行っていたソーナーの合成開口処理を、捜索中にOZZ-5内で行うことを目指しています。また、艦上解析装置では高周波・低周波ソーナーの情報を自動的に統合・解析し、より精度の高いデータを得ることを目指しています。この研究は、日仏共同の事業として行われています。

主要諸元

直径: φ533 mm
全長: 4,000 mm
重量: 900 kg
最大速度: 7ノット
航走時間: 9時間（4ノット巡航時）
誘導方式: GPS、INS
通信機器: WiFi、衛星通信
電池: リチウム2次電池

関連事項

機雷戦
掃海艇

外部リンク

自律型水中航走式機雷探知機（ＯＺＺ－Ｘ）の開発
我が国の防衛に貢献する無人水中航走体（UUV）への取組み - 三菱重工技報 Vol.48 No.4 (2011) 航空宇宙特集, 12-16頁
防衛省 平成24年度 事後の事業評価 評価書一覧
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