Orbit@home

orbit@home（オービット・アット・ホーム）は、地球軌道に接近する小惑星（地球近傍小惑星、NEO）の精密な軌道計算を実行し、将来的な地球への衝突可能性を評価することを目的とした、ボランティア参加型の分散コンピューティングプロジェクトです。

地球近傍小惑星の観測データは日々蓄積されていますが、その観測には必ず誤差が伴います。この誤差は、時間の経過とともに小惑星の将来の正確な位置を予測することを困難にします。特に、地球の重力を含む太陽系内の様々な天体の重力影響を受けることで、軌道は複雑に変化します。そのため、わずかな観測の不確実性が、数十年、数百年先の軌道予測に大きな違いを生じさせ、地球との衝突リスクの評価に影響を与えます。

orbit@homeプロジェクトでは、このような観測データの不確実性を考慮に入れ、数万、あるいは数十万もの異なる初期条件に基づいた小惑星の軌道進化をシミュレーションします。この膨大な数のシミュレーションを実行するには、非常に高い計算能力が必要です。そこで活用されるのが分散コンピューティングの仕組みです。

分散コンピューティングとは、インターネットを通じて世界中の多数のコンピューターを結びつけ、それぞれのアイドル状態にある計算資源を提供してもらうことで、単一のスーパーコンピューターでは難しい大規模な計算課題を解決する手法です。orbit@homeは、この分散コンピューティング環境を構築・管理するためのオープンソースソフトウェア基盤であるBOINC（Berkeley Open Infrastructure for Network Computing）を採用しています。

BOINCを利用することで、個人や組織は自分のコンピューターに専用のプログラムをインストールし、プロジェクトから送られてくる計算タスクをバックグラウンドで処理することができます。処理が完了した結果はプロジェクトサーバーに送り返され、集計・解析されます。このようにして、世界中の参加者の協力によって、地球近傍小惑星の軌道解析に必要な膨大な計算が実現されています。

プロジェクトは2008年3月4日に正式な活動を開始しました。その後、多くのユーザーが利用するWindowsオペレーティングシステム向けの参加用ソフトウェアが同年4月11日に公開され、より幅広いユーザーが計算に貢献できるようになりました。

orbit@homeによる軌道解析の結果は、潜在的に危険な小惑星（PHA: Potentially Hazardous Asteroids）の特定や、その軌道予測の精度向上に貢献します。これは、将来的な地球への小惑星衝突というリスクに対する理解を深め、可能な対策を検討する上で極めて重要な科学的貢献となります。

関連する概念として、プロジェクトの基盤である「Berkeley Open Infrastructure for Network Computing」や、解析対象である「地球近傍小惑星」についてさらに深く理解することが、orbit@homeの意義を把握する上で役立つでしょう。

プロジェクトに関する詳細は、公式ウェブサイト（外部リンク「orbit@home」）や関連研究情報（外部リンク「Orbit Reconstruction, Simulation and Analysis」）を参照することで得られます。

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