Orientations of Proteins in Membranes database

OPM (Orientations of Proteins in Membranes)

OPMデータベースは、膜タンパク質が細胞などの生体膜を構成する脂質二重膜の内部で、どのような空間的な位置を占めているかに関する専門的な情報を提供しています。

提供される主な情報

このデータベースの中心的な情報は、各膜タンパク質構造の脂質二重膜内における正確な空間配置です。これは、特定の計算モデル（脂質二重膜の陰溶媒和モデルなど）を用いて算出されます。計算によって得られたタンパク質の膜内での配置情報は、実験的に決定された膜貫通タンパク質や表在性膜タンパク質の空間配置データと比較検証されており、その信頼性が確認されています。

OPMデータベースは、単に位置情報を提供するだけでなく、膜に結合するタンパク質の構造的な分類（ファミリーやスーパーファミリー）、脂質二重膜に対するタンパク質の向き（膜トポロジー）、機能的な単位としてのタンパク質の四次構造（集合状態）、そしてそのタンパク質が細胞内のどの膜（例えば、細胞膜、ミトコンドリア膜など）へ輸送されるかといった、多岐にわたる詳細な情報も含んでいます。

データソースと利用方法

データベースに登録されているタンパク質構造データは、広く利用されている蛋白質構造データバンク（PDB）から取得されています。ユーザーは、計算された膜境界（ダミー原子として表現されます）を含むタンパク質の座標ファイルをダウンロードして利用することができます。また、OPMのウェブサイト上では、Jmolなどの分子ビューアを用いて、タンパク質構造と計算された膜境界平面を同時に視覚的に確認することが可能です。これにより、タンパク質が膜にどのように埋もれているかを直感的に理解できます。

データベースの利用と限界

OPMデータベースは、膜結合タンパク質の構造や機能に関する実験的および理論的な研究において、世界中の研究者によって広く活用されています。

しかしながら、全ての膜タンパク質構造がこのデータベースに含まれているわけではありません。例えば、タンパク質の三次元構造だけからは、脂質二重膜中での正確な空間配置を計算的に予測することが難しい場合があります。これは、実験的に決定された構造が、膜への結合に重要な役割を果たす特定の部位（例：両親媒性のαヘリックス、膜に露出する非極性残基、脂質が付加したアミノ酸残基など）を完全には含んでいない場合に起こり得ます。

また、PDBに登録されている構造の中には、主鎖原子のみの情報で解像度が比較的低いものがありますが、OPMデータベースにはこうした低解像度の構造は含まれていません。低解像度であっても、脂質二重膜中でのタンパク質の計算された空間配置情報を参照したい場合は、PDBTMのような他のデータベースを利用することができます。

OPMは、膜タンパク質の研究を進める上で貴重なリソースですが、データの網羅性には上記ののような制約があることを理解しておく必要があります。

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