P-6 (ミサイル)

ソ連の長射程対艦ミサイルP-6/P-35（SS-N-3 シャドック）

P-6（ロシア語: П-6）は、ソビエト連邦で開発された潜水艦発射型の長射程対艦ミサイルです。本記事では、水上艦発射型のP-35（GRAUインデックス4K48）についても解説します。西側諸国では、アメリカ国防総省（DoD）識別番号としてSS-N-3A/B、NATOコードネームとして「シャドック」と呼ばれていました。原型となったP-5も同じNATOコードネームを与えられていますが、確認の遅れからDoD識別番号はSS-N-3Cとなっています。

開発の経緯

第二次世界大戦後、ウラジーミル・チェロメイ率いる第52設計局（OKB-52）は、ドイツからの鹵獲技術などを参考に巡航ミサイルの開発を進めていました。当初は、技術的に未熟だった潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）を補完する対地火力として、核弾頭装備の対地型P-5が先行開発されました。しかし、対地火力としてはSLBMが主流になると考えられていたため、対艦ミサイルの開発が重視されるようになります。

アメリカ海軍の空母機動部隊がE-2A早期警戒機やF-4艦上戦闘機の配備によって制圧範囲を拡大したため、従来の魚雷を主兵装とする潜水艦では対抗が難しくなっていました。そこで1956年8月、ソ連政府は第52設計局に対し、長射程の対艦巡航ミサイルの開発を指示し、P-6とP-35が開発されることになりました。

設計

P-6/35の主な任務は、電波水平線以遠の敵艦を攻撃することでした。設計はP-5をベースとしていますが、対艦攻撃を目的としたため、最大速度はマッハ0.99（1,210 km/h）からマッハ1.5（1,800 km/h）に向上しています。一方、最大射程はP-6で450 km、P-35で250 km（後に350 km）に短縮されました。これは、F-4艦上戦闘機とE-2早期警戒機を搭載した空母機動部隊の防空圏が直径250-300kmと見積もられていたためです。巡航高度は400 m、4,000 m、7,000 mのいずれかで、最終飛行高度は100 mでした。

潜水艦発射型のP-6は、当時としては長大な射程450 kmを誇っていましたが、発射時にはP-5と同様に浮上する必要がありました。発射準備には3分を要し、発射後もミサイル本体のシーカーが目標を追尾できる距離に近づくまで、艦上のオペレーターが誘導する必要がありました。誘導中は潜水できないため、敵の攻撃に対して脆弱でした。

一方、水上艦発射型のP-35は、航空機用のウスペク型誘導装置と連動することで、航空機と艦艇で情報を交換できる誘導システムを世界で初めて実現しました。ウスペクを搭載したTu-95RTsレーダー哨戒機は、理論上、7,000 km離れた場所からでもP-35を目標へ誘導できました。後に、P-6を搭載する675型潜水艦の一部もウスペクに対応するように改装されました。

配備

P-6は、1959年から1962年にかけて黒海艦隊のバラクラヴァ実験場で31回の発射試験が行われましたが、コンテナからの発射失敗や誘導装置の故障が相次ぎました。改良後、1962年から1963年にかけて北方艦隊のネノクサ実験場で46回の発射試験が行われ、1964年6月23日に海軍に引き渡されました。

P-35は、1962年に実艦標的への射撃試験を成功させ、問題点を改善した後、1965年から海軍への引き渡しが開始されました。1963年からは、沿岸砲兵向けの地上発射型P-35Bの開発も開始され、リデュート移動発射機とともに1966年8月から引き渡しが開始されました。1974年からは、ECCM能力を向上させた改良型3M44「プログレス」が開発されています。

運用国

ソビエト連邦海軍
ユーゴスラビア海軍
ベトナム人民海軍
ブルガリア海軍

搭載艦

651型潜水艦（ジュリエット型）
675型潜水艦（エコーII型）
58型ミサイル巡洋艦（キンダ型）
1134型ミサイル巡洋艦（クレスタ-I型）

もう一度検索