P-70 (ミサイル)

P-70「アメチースト」

P-70「アメチースト」（ロシア語: П-70 «Аметист»）は、ソビエト連邦で開発された短射程の潜水艦発射型対艦ミサイルです。「紫水晶」を意味する愛称を持ちます。

GRAUインデックスは4K66、アメリカ国防総省（DoD）識別番号はSS-N-7、NATOコードネームは「スターブライト」として知られています。

開発の背景

1956年、ソ連海軍は既存の対地巡航ミサイルP-5を基に、潜水艦発射型対艦ミサイルP-6「プログレス」の開発を決定しました。P-6を搭載した675型潜水艦（エコーII型）は1963年から配備されましたが、発射時に浮上する必要があるという欠点がありました。

この問題を解決するため、P-5/6の開発を担当していた第52設計局（OKB-52）は、1950年代中期から水中発射可能な巡航ミサイルの研究開発を進めました。その結果、1959年4月1日、ソ連政府は「水中発射対艦巡航ミサイル（P-70型）の設計」に関する指令を下しました。

当時、他国の同種ミサイルも水上発射式であったため、水中発射の実現は画期的なものでした。

開発体制

開発は第52設計局が統括し、以下の各設計局・研究所が分担しました。

第2設計局: エンジン
第6研究所: 燃料及び弾頭
第34設計局: 発射機
第45研究所: 弾体
第49研究所: 射撃指揮装置（FCS）
第3研究所: センサと誘導装置

特に、第2設計局が開発した固体燃料ロケット・エンジンは、従来のソ連製ミサイルが液体燃料ロケットを採用していた中で、画期的なものでした。

ミサイルの構造と発射

ミサイルは15度の角度がついたコンテナに収容され、潜水艦に搭載されます。発射時には、まず4基の通常炸薬式ブースターによって空中に射出されます。発射可能深度は30-60メートルとされていました。

空中に飛び出したミサイルは、通常炸薬式の6基のブースター（上昇用4基、加速用2基）を順次に点火して加速した後、固体燃料ロケット式の293P型サステナー（燃焼時間3分）で巡航に入ります。巡航高度は60メートルとされました。

射程は計画値80kmでしたが、実験では70kmが最大でした。

試験と配備

1961年6月24日から陸上での発射試験が開始され、1964年からは613AD型実験艦S-299を利用しての洋上試験も開始されました。これらの試験を経て、1968年6月3日に海軍に引き渡されました。

プラットフォームとしては、実験艦的性格が強い661型潜水艦（パパ型）が1隻のみ建造された後、量産型として670型潜水艦（チャーリーI型）が配備されました。

その後の発展

ソ連海軍はP-70の性能に満足せず、1963年には新型ミサイルの開発を第52設計局に依頼しました。その結果、P-70を基に長射程化した発展型P-120「マラヒート」（SS-N-9「サイレン」）が開発され、これを搭載するプラットフォームとして670型を発展させた670M型潜水艦（チャーリーII型）が建造・配備されました。

搭載艦

661型潜水艦（パパ型）
670型潜水艦（チャーリーI型）

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