P.S.アイ・ラヴ・ユー

P.S.アイ・ラヴ・ユー：ビートルズの隠れた名曲

1962年、ビートルズのデビュー・シングル『ラヴ・ミー・ドゥ』のB面曲として世に送り出された「P.S.アイ・ラヴ・ユー」。この曲は、後に彼らの代表曲の一つとなるだけでなく、音楽史に名を刻む楽曲へと成長を遂げました。

ポール・マッカートニーによる創作と制作背景

この楽曲は、ポール・マッカートニーによって作曲されました。1962年の春、彼はドイツ・ハンブルク滞在中にインスピレーションを受け、この曲を書き上げたと言われています。歌詞の内容から、当時交際していたドット・ローヌへの恋心を歌った曲ではないかとの推測もありましたが、マッカートニー自身はそれを否定しています。彼は、手紙をテーマにした曲であり、特定の人物や出来事を描いたものではないと説明しています。

ジョン・レノンもこの曲に関わっており、彼はポールの曲に手を加えた可能性を示唆していますが、具体的な記憶はないと述べています。レノンは、この曲がシュレルズの『ソルジャー・ボーイ』のようなスタイルを目指したものであるともコメントしています。

レコーディングとリリース

「P.S.アイ・ラヴ・ユー」のレコーディングは、1962年9月11日にEMIレコーディング・スタジオで行われました。興味深いのは、このセッションでドラムを担当したのがリンゴ・スターではなく、セッション・ドラマーのアンディ・ホワイトであった点です。当時、すでにピート・ベストの後任としてリンゴ・スターが加入していましたが、プロデューサーのジョージ・マーティンはそれを認識しておらず、アンディ・ホワイトを起用したのです。リンゴ・スターは、この曲ではマラカスを担当しています。

当初はA面曲としてのリリースも検討されましたが、1934年にビリー・ホリデイが同名曲をリリースしていたため、B面曲として発売されることになりました。しかし、B面曲ながらBillboard Hot 100で最高10位を記録するなど、大きな成功を収めました。

さらに、BBCラジオの番組でもこの曲が演奏され、その音源の一部は後年発売された『オン・エア〜ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2』に収録されています。

楽曲のクレジット

ボーカル、ベース：ポール・マッカートニー
アコースティック・ギター（リズムギター）、バッキング・ボーカル：ジョン・レノン
アコースティック・ギター、バッキング・ボーカル：ジョージ・ハリスン
マラカス：リンゴ・スター
ドラム：アンディ・ホワイト
エンジニア：ノーマン・スミス

様々なバージョンとカバー

ポール・マッカートニーは、1986年から1987年にかけて行われた未発表のセッションで「ラヴ・ミー・ドゥ」とこの曲をマッシュアップした「P.S.ラヴ・ミー・ドゥ」を録音しました。このバージョンは、後に発売されたアルバムに収録され、彼のワールドツアーでも演奏されました。

まとめ

「P.S.アイ・ラヴ・ユー」は、ビートルズの初期作品の中でも、特に魅力的な楽曲です。簡潔ながらも奥深い歌詞、そしてレコーディング時のエピソードは、この曲に更なる魅力を与えています。B面曲という位置づけでありながらも、その音楽性と人気は、ビートルズの幅広い音楽性を示す重要な作品となっています。この曲は、単なる楽曲ではなく、ビートルズの歴史、そして音楽史の一部として、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

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