P5M (航空機)

P5M マーリン：レシプロ双発飛行艇の詳細

P5M マーリンは、アメリカのマーチン社が開発したレシプロ双発の飛行艇です。1950年代から1960年代にかけて、アメリカ海軍を中心に哨戒任務で活躍しました。その特徴的な設計と運用について解説します。

開発の経緯

P5Mは、先行するPBMマリナーの発展型として開発されました。エンジンの性能向上と艇体形状の改善が図られる一方、尾部はより保守的な設計となっています。試作機XP5M マーリンはPBM-5マリナーの最終型をベースに開発され、その後のP5M-2で大幅な設計変更が加えられました。P5M-1の一部は訓練用として使用され、後にTP-5Aと改称されています。

設計の特徴

マーリンは、エンジンとプロペラを水面からの飛沫から保護するため、ガル翼形式の主翼を採用しています。動力は2基のライトR-3350空冷星型レシプロエンジンです。艇体後部は、水面から緩やかに持ち上がる形状で、これにより機体の安定性を高め、波による影響を軽減しています。

試作機は背面に12.7mm重機関銃を2挺装備するほか、機首と尾部に20mm連装機銃を備えていました。生産型では、視界を改善するためにフライトデッキが高められ、機首銃座の代わりにAN/APS-44捜索レーダーが搭載されました。また、エンジンナセルは後方に延長され、武器庫として利用されました。

P5M-2では、水平尾翼がT字尾翼に変更され、尾部銃座の代わりにAN/ASQ-8磁気探知装置（MAD）のブームが装着されました。乗員の居住性も向上し、離着水時の飛沫を抑えるための工夫が凝らされています。

作戦歴

ベトナム戦争では、アメリカ海軍のVP-40が「マーケット・タイム」パトロールに参加し、北ベトナムから南ベトナムへの物資輸送を監視しました。カリタック級水上機母艦から発進し、メコンデルタ沖をパトロールしました。

アメリカ海軍最後のP5Mは、1968年7月12日にメリーランド州のパタクセント・リバー海軍航空基地まで飛行し、スミソニアン博物館での展示が検討されましたが実現せず、最終的にフロリダ州ペンサコーラの国立海軍航空博物館に展示されています。

アメリカ沿岸警備隊でも航空救難任務向けにP5Mが運用されましたが、メンテナンスの難しさから海軍に引き渡され、訓練機として使用されました。フランス海軍は1959年にアメリカ海軍から10機のマーリンを受け取り、西アフリカのダカールを拠点に哨戒任務に就きましたが、5年後にアメリカへ返還されました。

各型解説

XP-5M: PBM マリナーを改造した試作機
P5M-1: アメリカ海軍向け生産型
P5M-1G: アメリカ沿岸警備隊向け改造機
P5M-1S: 電子装備と対潜機器を強化した型
P5M-1T: 乗員訓練機
P5M-2: 性能向上型
P5M-2S: 電子装備と対潜機器を強化したP5M-2
P5M-2G: アメリカ沿岸警備隊向けに生産された型
P-5A: 1962年にP5M-1を改称
SP-5A: 1962年にP5M-1Sを改称
TP-5A: 1962年にP5M-1Tを改称
P-5B: 1962年にP5M-2を改称
SP-5B: 1962年にP5M-2Sを改称

要目（P5M-2）

乗員: 11名
全長: 30.7 m
全幅: 35.7 m
全高: 10.0 m
翼面積: 130.1 m2
空虚重量: 22,900 kg
最大離陸重量: 38,600 kg
発動機: ライト R-3350-32WA 空冷星型レシプロエンジン 3,450 hp ×2基
最高速度: 404 km/h
巡航速度: 242 km/h
航続距離: 3,300 km
上昇限度: 7,300 m
武装: 魚雷、機雷、爆弾、爆雷、核爆雷などを搭載可能

P5M マーリンは、その独特な形状と多岐にわたる任務で、航空史に名を残す飛行艇の一つです。

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