PCエンジンLT

NEC PCエンジンLT：携帯型ゲーム機のパイオニア

1991年、NECホームエレクトロニクスから発売されたPCエンジンLTは、家庭用ゲーム機市場に革新をもたらした一台です。その名の通り、Laptop（ラップトップ）を略した「LT」の名が示すように、携帯性を重視した設計が大きな特徴でした。当時の家庭用ゲーム機としては異例の高価格でしたが、その性能と斬新なデザインは多くのゲーマーを魅了しました。

持ち運び可能なPCエンジン体験

PCエンジンLTは、折りたたみ式の筐体に4インチのTFTカラー液晶を搭載。この液晶は、当時としては非常に高価で高品質なものでした。本体下部にはゲームソフトを挿入するスロットと、連射機能付きコントローラーが一体化されており、ゲームボーイアドバンスSPを大型化し、より洗練させたようなデザインと言えるでしょう。しかし、バッテリー非搭載のため、ACアダプタまたは専用のカーアダプタを使用する必要がありました。この点が、完全な携帯ゲーム機としてはやや不便だったと言えるでしょう。

高性能と多彩な機能

PCエンジンLTは、単なる携帯ゲーム機ではありませんでした。PCエンジン本体と同等のゲーム処理能力と拡張性を備えており、多くのPCエンジン用ソフトをプレイすることができました。CD-ROM²システムやSUPER CD-ROM²システムにも対応（SUPER CD-ROM²は別売りのアダプタが必要）し、幅広いゲームタイトルを楽しむことが可能でした。さらに、TVチューナーを内蔵していたため、ゲームだけでなくテレビ番組の視聴も可能。外部入力端子も備えていたため、汎用モニターとしても活用できるなど、その多機能さも魅力の一つでした。ただし、パッド端子の構造上の都合から、一部の周辺機器、具体的にはメモリーカード「メモリーベース128」や「セーブくん」には対応していませんでした。

ハードウェア仕様

PCエンジンLTの主な仕様は以下の通りです。

外形寸法: 縦135mm×横140mm×厚さ61mm
重量: 約650g
ディスプレイ: 4インチ アクティブマトリクス駆動方式 カラー液晶画面（バックライト付き、140,300画素）
音声出力: 丸型（直径29mm）ダイナミックスピーカ、3.5mmステレオミニジャック
電源: ACアダプタ（9V）
付属品: 専用ACアダプタ、取扱説明書

後世への影響と現代への回帰

PCエンジンLTは、その高価格とニッチな存在感から、広く普及したとは言えませんでした。しかし、その革新的な携帯ゲーム機としてのコンセプトは、後の携帯ゲーム機開発に少なからず影響を与えたと考えられます。近年では、サードパーティから外付け液晶ディスプレイが発売され、比較的安価にPCエンジンLTを現代の環境で楽しむことが出来るようになりました。これは、PCエンジンLTが持つ独特の魅力が、時を超えて再評価された証と言えるでしょう。また、1987年のエレクトロニクスショーでは、PCエンジンLTのプロトタイプとも言える、CD-ROM²システムに液晶テレビを接続した参考出品が展示されていたことも興味深い点です。これらの事実から、PCエンジンLTは、単なるゲーム機ではなく、ゲーム機の未来を予見した実験的な製品だったと言えるのではないでしょうか。

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