PDF/Xは、
国際標準化機構(ISO)によってISO 15930として定義された、標準PDFのサブセットです。この規格の主な目的は、グラフィックデータの交換を容易にすることであり、特に印刷業界における標準PDFにはない、一連の要求事項に対応することにあります。
例えば、PDF/X-1aでは、すべてのフォントを埋め込む必要があり、使用されるすべての画像のカラーは
CMYKまたは特色でなければなりません。これは、印刷時に色の再現性を保証するために重要な規定です。一方、PDF/X-3では、より柔軟性が高く、ICCプロファイルを持つ
RGBカラーもサポートされています。これにより、より幅広い色空間に対応することが可能になり、色の再現性の幅が広がります。
また、PDF/Xファイルには、印刷条件または「output intent」を定義することが求められます。これは、例えば「CGATS TR 001 SWOP」のような標準プロファイルコードを使用して指定します。これにより、印刷時にどのような色空間で出力されるかを明確に定義し、意図しない色のずれを防止します。PDF/Xファイル内のグラフィックは、それぞれが独自のカラープロファイルを持つことができ、ファイル全体が
CMYKであっても、個々のグラフィックは(調整情報を付加した)
RGBカラーである場合があります。これは、柔軟な色管理を可能にし、正確な色再現に寄与します。
印刷を目的として設計されているため、PDF/Xファイルは動的なコンテンツをサポートしていません。具体的には、フォーム、署名、コメント、音声や動画の埋め込みといった、標準PDFの機能はPDF/Xでは利用できません。この制限により、PDF/Xは印刷における安定性と信頼性を確保しています。これらの特徴により、PDF/Xは印刷業界において、グラフィックデータの交換における事実上の標準となっています。
PDF/Xのより詳細な情報や関連規格については、以下の資料をご参照ください。
関連規格:
PDF: PDFの基本規格について
PDF/A|PDF_A: 長期保存を目的としたPDFの規格
参考資料(英語):
PDF/X Frequently asked questions: PDF/Xに関するよくある質問集
PDF/X-3: PDF/X-3の仕様についての解説
PDF-X — Includes PDF/X-1a and PDF/X-3: PDF/X-1aとPDF/X-3の概要
Under the Hood of PDF/X-1 by Scott Tully, Vertis, March 21, 2002: PDF/X-1に関する技術的な解説
PDF/X in Mac OS X: Mac OS XにおけるPDF/Xの利用について
日本語資料:
ISO仕様書の日本語による概要説明: PDF/XのISO仕様書の概要
PDF/Xについて (1) PDF/X-1a: PDF/X-1aに関する詳細
PDF/Xについて (2) PDF/X-3: PDF/X-3に関する詳細
PDF/Xについて (3) PDF/X-2: PDF/X-2に関する詳細
これらの情報により、PDF/Xの理解を深めることができます。