PiCNiC

『PiCNiC』：残酷さとメルヘンが交錯する岩井俊二ワールド

1994年に製作された岩井俊二監督の映画『PiCNiC』は、浅野忠信とCharaを主演に迎え、独特の世界観で観る者を魅了する作品です。当初は1995年の公開予定でしたが、当時の社会情勢を鑑み、暴力的なシーンをカットした上で1996年に公開されました。

本作は、精神病院を舞台に、そこで出会った若者たちの奇妙な冒険を描いています。メルヘンチックな雰囲気と、時に残酷さを孕んだ描写が共存する、岩井俊二監督独特の映像美が随所に散りばめられています。自主制作的な雰囲気も持ち合わせ、その独特の感性が光る作品と言えるでしょう。また、主演の浅野忠信とCharaの共演は話題を呼び、後に二人の結婚へと繋がったことでも知られています。REMEDIOSが手掛けたサウンドトラックも、作品の世界観をさらに深める重要な要素となっています。

物語：塀の上の逃避行

物語の中心となるのは、精神病院に入院しているココ（Chara）です。彼女はそこで、ツムジ（浅野忠信）とサトル（橋爪浩一）という二人の青年と出会います。ツムジとサトルは、病院の塀の上を歩くという、いわば探検のような遊びを日課としています。

ある日、ココはツムジを「もっと遠くまで行こう」と誘います。病院の外に出ることを禁じられているココは、塀の上を歩き、塀から塀へと飛び移りながら、二人で遠くまで旅に出ます。その逃避行の果てに辿り着いた教会で、ツムジは神父から聖書を授かります。

病院へ戻った後、ツムジは聖書を読み耽るうちに「世界はすぐに終わる」という確信を持つようになります。そして、彼らは世界の終わりを見届けようと、再び塀の上を歩き始めます。この逃避行の先に何が待ち受けているのか、観る者に想像の余地を残す、余韻の残るエンディングとなっています。

キャストとスタッフ

主演のCharaと浅野忠信の他に、橋爪浩一、鈴木慶一、六平直政、伊藤かずえといった個性豊かな俳優陣が出演しています。それぞれの俳優の演技が、この独特な世界観を構築する上で重要な役割を果たしています。

ココ：Chara
ツムジ：浅野忠信
サトル：橋爪浩一
牧師：鈴木慶一
看護長：六平直政
女医：伊藤かずえ
看護婦：山本ふじこ、佐山真理、武藤寿美
患者エキストラ：へらちょんぺ

受賞歴

『PiCNiC』は、その高い評価から、いくつかの映画賞を受賞しています。

第18回ヨコハマ映画祭 主演男優賞：浅野忠信
第18回ヨコハマ映画祭 新人賞：Chara
* ベルリン国際映画祭 ベルリン新聞記者会賞

これらの受賞歴からも、本作がいかに高く評価されているかが分かります。

まとめ

『PiCNiC』は、岩井俊二監督の独特な映像美と、複雑な人間模様が織りなす、忘れがたい作品です。メルヘンチックな雰囲気と残酷さが同居する世界観、そして、浅野忠信とCharaの素晴らしい演技は、観る者に強い印象を残します。公開から年月が経った今でも、多くのファンを魅了し続ける、名作と言えるでしょう。

もう一度検索