PSI (オウム真理教)

PSI（Perfect Salvation Initiation 完全救済イニシエーション）

PSIとは、オウム真理教において用いられた修行の一種、またはその修行に使用するヘッドギアそのものを指します。

概要

PSIヘッドギアは、オウム真理教の科学技術省大臣であった村井秀夫によって発明されました。教団の説明によれば、このヘッドギアの電極から麻原彰晃の脳波を再現した電気を流すことで、信者の脳波を麻原の脳波と同調させる効果があるとされていました。以前は電極を直接頭部に貼り付けて電流を流す方式が用いられていました。

麻原自身もPSIを頻繁に着用しており、「PSIがないと気が狂いそうだ」と述べていたとされ、逮捕時にも使用していました。PSIのレンタルには月額10万円、購入には100万円という高額な布施が必要であり、その特異な外観から、着用した信者は一目でオウム真理教信者と認識されるほどでした。このことは教団のカルト性を象徴するものであり、麻原自身もPSIを装着した姿を撮影されることを嫌っていたとされています。

教団の後継団体であるアーレフ（Aleph）でも、PSIは改良されて使用されていました。アーレフ時代の規約では、PSIについて「旧団体代表の脳波によるマインドコントロール装置であるという誤解を受けているが、実際には同人の脳波そのものではなく、それを加工したものであり、特定人物の意思に従わせるマインドコントロールの目的も機能も存在しない」「脳波を活用した瞑想促進・健康機器」と定義しています。

1995年前後、オウムのヘッドギアは当時の日本の学問分野では境界領域に位置づけられており、病気を治療するのではないにもかかわらず神経回路にアプローチするものは、生理学、工学、情報工学など、いずれの分野にも研究場所が存在しませんでした。しかし、現在では神経科学や神経工学が統合され、新たな学問領域として確立されています。

使用方法

PSIの使用にあたっては、まず頭皮に薬品を塗布し、ヘッドギアを装着して電源を入れます。すると、額にピリピリとした電流が流れてきます。一般的には、信者がワークを行う際や、在家信者が使用する携帯用のものが知られていますが、出家信者が睡眠時や個室で使用する際には、コンピューターから直接信号を取り込むタイプのPSIが用いられました。このタイプのPSIは、AC電源から電流を取り込み、接続されたコンピューターの画面に麻原の脳波が映し出される仕組みとなっていました。信者は、画面に表示される脳波形から次に強い電流が流れるタイミングを予測することができたため、強い恐怖を感じたとされています。強い電流が流れる際には爆発するような痛みが生じ、眼前に閃光が散ることがあったと言います。独房修行においては、苦痛に耐えかねてヘッドギアを取り外してしまう信者が続出したため、手錠をかけざるを得ない状況も発生しました。しかし一方で、「装着するだけで修行が進められる」としてPSIを好む信者も存在しました。

第6サティアン2階には、「蜂の巣ベッド」と呼ばれる木組みの3階建てベッドが500人分、隙間なく設置されていました。信者はこのベッドに寝かされ、すべてのPSIにそれぞれ1台ずつコンピューターが接続されていました。3階には100の「シールドルーム」と呼ばれる2畳ほどの金属張りの個室があり、PSIが無造作に置かれていました。これらの個室にはコンピューターはなく、小さな覗き穴から隣の部屋を監視できる構造となっていました。

PSIヘッドギアは構造が粗雑であったため、装着した頭部から漫画のように煙が出ることが頻繁にありました。また、熱を帯びるため、長時間電源を入れたまま着用し続けると額が焼け爛れ、火傷を伴うことがありました。そのため、定期的に電源をオフにする信者もいましたが、一部の熱心な信者は尊師への帰依を示すために長時間電源を入れ続け、額を頭蓋骨まで黒焦げになるほど火傷させ、手術が必要となるほどの重傷を負うケースも発生しました。

目的

当初、PSIは単なる布施集めの道具と考えられていましたが、脳科学者の苫米地英人は、PSIに拘泥する目的は単に麻原の脳波を信者に同調させることだけではないと指摘し、真の意図は洗脳にあったと考察しています。実際に、信者の証言によれば、PSIの使用によって呆然としたり、記憶に欠落が生じたりすることがあったとされています。このような意識変容プログラムは、後にサットヴァレモン（LSD入りジュース）を使用したキリストのイニシエーションへと引き継がれていきました。

上祐史浩は、PSIを製作する際に調べた麻原の脳波が精神異常者の脳波と類似していることを指摘しています。オウム真理教はこれを脳死の脳波に近いものと解釈し、「解脱者の脳波」として宣伝していました。

関連項目

ヘッドギア
洗脳
* マインドコントロール

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