Preboot Execution Environment

Preboot eXecution Environment (PXE) について

Preboot eXecution Environment（PXE）は、インテルが策定したネットワークブートの規格です。PXEを利用することで、クライアントコンピュータはネットワークを通じてサーバー上にあるOSイメージを起動できます。これにより、ストレージを持たないシンクライアントや、ストレージに別のOSがインストールされている場合でも、ネットワーク経由でOSを起動できるようになります。

PXEの概要

PXEブート環境を構築することで、以下のようなことが可能になります。

ストレージを持たないコンピュータの起動: HDDなどのストレージを持たないシンクライアントに、OSイメージをネットワーク経由で送り込み、動作させることができます。
インストールメディアがないコンピュータへのOSインストール: DVDドライブなどのインストールメディアがないコンピュータに対して、インストールイメージをネットワーク経由で送り込み、インストーラーを起動させることができます。

PXEブートの構成

PXEによるネットワークブートには、以下の構成要素が必要です。

1. クライアント: PXEに準拠したファームウェアが組み込まれたNIC（ネットワークインターフェースカード）が必要です。このファームウェアは、ネットワーク経由でブートローダーを取得し、実行する役割を担います。
2. ネットワーク上のサーバ: 以下のサーバーが必要です。
DHCPサーバ（またはBOOTPサーバ）: クライアントにIPアドレスを割り当てる役割を担います。また、PXEブートに必要なオプション（OPTION 60, 66, 67）を提供します。
TFTPサーバ: ブートローダをクライアントに送信する役割を担います。DHCPサーバのOPTION 67で指定されたファイル名で起動イメージが用意されている必要があります。
(オプション) WWWサーバ、FTPサーバ: 起動イメージがHTTPやFTPに対応している場合、オペレーティングシステムやインストーラーのイメージをWWWサーバやFTPサーバから別途配布する構成が一般的です。

DHCPオプション

DHCPサーバは、PXEブートに必要な以下のオプションを提供します。

OPTION 60: Client Identifier（クライアントの識別子）
OPTION 66: TFTP Server Name（TFTPサーバのアドレス）
OPTION 67: Boot File Name（ブートローダーのファイル名）

ProxyDHCP

既存のDHCPサーバの設定を変更せずにPXEブート環境を構築したい場合は、ProxyDHCPを使用します。ProxyDHCPは、既存のDHCPサーバとクライアントとの通信を仲介し、PXEブートに必要なオプションを付加します。Windows向けのWindows展開サービス（WDS）も同様の仕組みで機能しています。

PC起動時のPXEエラーメッセージ

PXE ROMを搭載したコンピュータが、ハードディスクなどの起動デバイスからOSを読み込めない場合、起動時にPXEという文字列を含むエラーメッセージが表示されることがあります。

これは、PXEが起動リソースを検索した結果見つからなかったことを示しており、DHCPサーバやLANケーブルの接続を確認するように促すメッセージです。具体的には、BIOSなどの起動デバイス設定において、ネットワークブートが有効になっているにも関わらず、ネットワークブートに失敗した場合に表示されます。

もし、ネットワークブートを利用していない環境でこのエラーメッセージが表示された場合は、BIOSの起動デバイス設定に問題があるか、または起動に使用するハードディスクに異常が発生している可能性が考えられます。

PXE関連技術

DHCP: 動的なIPアドレスの割り当てを行うプロトコル。
BOOTP: DHCPの前身となるプロトコル。
TFTP: シンプルなファイル転送プロトコル。
WinINSTALL: PXEを実装したPC統合管理ツール。
iPXE: オープンソースのPXE実装。
UEFI: BIOSの後継となるファームウェア。
BIOS: PCの基本ソフトウェア。

参考文献

Intel and Systemsoft, Preboot Execution Environment (PXE) Specification, Version 2.1, 1999.

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