Qmail

qmail（キューメイル）

qmailは、ダニエル・バーンスタインによって開発されたメール転送エージェント（MTA）で、主にUnix系のオペレーティングシステムで運用されます。初めて公開されたのは1997年2月であり、以来、独自の設計理念に基づいて改良が重ねられてきました。同ソフトウェアの最新バージョンは1998年6月15日にリリースされた1.03です。

特徴

qmailの最大の特徴は、従来のMTAであるSendmailと比較して、シンプルで堅牢な構造を持っている点です。Sendmailはその複雑さからセキュリティホールが頻繁に発見されていましたが、qmailはその設計思想により、運用上の問題は主にDoS攻撃への脆弱性に限られます。幸いなことに、この脆弱性はリソース制限によって回避することが可能であり、その他のセキュリティホールは現在までに確認されていません。特にユニークな制度として、セキュリティホールを指摘した開発者には500ドルの賞金が提供されるといった仕組みもあります。

qmailの設定は、従来のMTAとは異なり、シンプルで直感的です。設定は1ファイル1設定で行われ、煩雑な設定作業を必要としません。デフォルトでは送信メールがオープンリレーにならないよう設計されており、セキュリティ面でも安心です。

メールボックスの形式はMaildirがデフォルトで、非常に堅牢であるとともに、推奨される形式です。しかし、必要に応じてmbox形式での運用も可能です。さらに、qmailにはvpopmailなどの周辺ツールが存在し、バーチャルホストの実現を可能にしています。ただし、これらのツールは原作者による開発が事実上終了しているため、最新のOSとの互換性を持たせるためには非公式のパッチを適用する必要がある場合があります。

qmailは他のMTAと異なり、宛先不明のメールを一度受け取ると、差出人にリターンメールを返す仕組みになっています。この特性は、スパムメールの宛名詐称に利用され、後方拡散や巻き添えスパムといった二次被害を引き起こすことがあります。また、改行コードの処理についてもRFCに従わない点が指摘されています。

ライセンス

qmailは長期間にわたりソースコードの状態での配布が可能でしたが、コンパイル済みのソフトウェアの配布には条件が設けられていました。具体的には、ディレクトリ構成を変更しないなど、あらかじめ定められた条件に従う必要があったため、各OS向けの独自ソフトウェアパッケージの作成は難しかったのです。しかし、2007年11月30日、ダニエル・バーンスタインはqmailをパブリックドメインとして宣言しました。これにより、より自由に利用できるようになった一方で、作者は依然としてオリジナルのインタフェースを保つことを推奨しています。

参考文献と関連項目

具体的な資料やリソースを探す際には、daemontoolsやnetqmailなどの外部リンクも活用することができます。これにより、使用経験を豊かにするための情報を得ることができます。

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