R.P.G.

宮部みゆき『R.P.G.』：虚構と現実が交錯する家族の肖像

『R.P.G.』は、宮部みゆきが2001年に発表した長編ミステリー小説。宮部作品としては初の書き下ろし文庫として集英社文庫から刊行され、後にNHKでドラマ化もされた。

作品概要

本作は、インターネットを通じて形成された「家族」という、現代社会ならではの関係性を軸に、殺人事件の真相に迫る物語。タイトルの「R.P.G.」は、ロールプレイングゲームを意味しており、作中で重要なモチーフとなっている。

物語は、建築中の家で発見された男性の刺殺体から始まる。被害者は所田良介。彼は現実の家族には秘密で、ネット上で「お父さん」を名乗り、家族ごっこに興じていた。捜査を進めるうちに、刑事たちはネット上の家族関係に潜む闇に気づき、真相を究明するためにある「計画」を実行することになる。

あらすじ

所田良介が殺害された現場は、建築中の一軒家。捜査の結果、所田がインターネット上で「お父さん」として家族ごっこをしていた事実が判明する。武上悦郎ら捜査陣は、ネット上の家族である「カズミ」「ミノル」「お母さん」を容疑者として絞り込み、真相を明らかにするべく、ある「計画」を実行に移す。マジックミラー越しに事件を見つめる所田の娘・一美。果たして、犯人は誰なのか？そして「計画」の全貌とは？

登場人物

警察関係者

武上悦郎: 警視庁捜査一課の刑事。デスクワーク担当。
石津ちか子: 過去に武上と仕事をしたことのある女性刑事。ある事件がきっかけで左遷されている。
葛西規義: 警視庁捜査一課の管理官。
下島規義: 警視庁捜査一課の係長。「計画」の指揮官。
中本房夫: 警視庁捜査一課のベテラン刑事。「計画」の発案者。
徳永松男: 武上の部下。記録係を担当。
鳥居: 武上の部下。有能だが融通が利かない一面がある。
秋津信吾: 警視庁捜査一課の刑事。武上と親しい。
淵上美紀恵: ちか子の同僚。一美の身辺警護を担当。

所田家

所田良介: 殺害された会社の課長。ネット上で「お父さん」を名乗っていた。
所田春恵: 良介の妻。地味なタイプの女性。
所田一美: 良介の娘。成績優秀な女子高生。

ネット上の家族

加原律子: ネット上の娘「カズミ」。
北条稔: ネット上の息子「ミノル」。
三田佳恵: ネット上の母親「お母さん」。

その他

今井直子: カラオケボックスのアルバイト店員。所田殺害事件の数日前に殺されている。
A子: 今井直子の同期生。連続殺人事件の容疑者。
石黒達也: 所田一美の交際相手。

作品の特徴と魅力

本作は、宮部みゆきが得意とする社会派ミステリーであり、現代社会における家族のあり方、インターネットを通じたコミュニケーションの問題点を鋭く描いている。

物語が進むにつれて、ネット上の家族関係が現実世界に影響を及ぼし、登場人物たちの心理が複雑に絡み合っていく。読者は、虚構と現実の境界線が曖昧になる中で、事件の真相に迫っていくことになる。

また、宮部作品のファンにとっては、『クロスファイア』の石津ちか子、『模倣犯』の武上悦郎が登場するクロスオーバー作品としても楽しめる。

『R.P.G.』は、現代社会が抱える問題を浮き彫りにしながら、ミステリーとしての面白さも兼ね備えた、読み応えのある作品だ。読者は、予測不能な展開と衝撃の結末に、最後まで目が離せないだろう。

ドラマ版

2003年にはNHKでテレビドラマ化され、後藤真希が主演を務めた。ドラマ版では、原作のストーリーを忠実に再現しながら、映像ならではの表現で、より深く物語の世界観を描き出している。

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