RCRアルキテクタス

RCRアルキテクタスは、ラファエル・アランダ、カルマ・ピジェム、ラモン・ビラルタによって1988年にスペイン・カタルーニャ地方のオロットで設立された建築家集団です。彼らはカタルーニャ出身で、同じ建築学校を卒業後、故郷であるオロットを拠点に活動を開始しました。RCRという名称は、3人の名前の頭文字から取られています。

彼らの活動は、地域に根ざした視点と国際的な視点を融合させた独自の建築スタイルを特徴としています。特に、地方の価値観を尊重しつつ、国際的な影響力を持つ作品を生み出す姿勢が高く評価され、2017年には建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞を受賞しました。授賞式は、東京の迎賓館赤坂離宮で行われました。

キャリア初期には、日本の長崎で商業施設のコンペで優勝するなど、海外でのプロジェクトにも携わりました。フランスでは、ロデーズの「スラージュ美術館」やネグルプリスの「ラ・キュイジーヌ」などの代表作があります。しかし、RCRの活動の中心は、地元カタルーニャにあります。彼らが初めてミース・ファン・デル・ローエ賞にノミネートされた作品も、ジローナ県のリウダウラの文化レクリエーションセンターでした。

RCRがプリツカー賞を受賞した理由の一つは、彼らが地方の価値観と国際的な価値観の両立を体現している点にありました。彼らは、文化的施設や教育施設など、公共・私設を問わず様々な建築物を設計してきましたが、そのすべてにおいて、土地の文脈を深く理解し、空間と対話することで、その土地に根ざした建築を実現してきました。プリツカー賞の審査員も、彼らの作品が各々の土地のコンテクストに沿ったものであることを高く評価しています。

特に、オロットの公営陸上競技場(Estadio de Atletismo Tussols-Basil)は、彼らの建築哲学を象徴する作品です。既存のオークの森を切り開くのではなく、森の地形を尊重し、森とトラックが共存するようなデザインを実現しました。具体的には、森の中を縫うように400メートルトラックを配置することで、森とトラックの関係性を創造しました。この作品は、2000年にカタルーニャ州の建築賞(Prix FAD)を受賞し、2003年にはミース・ファン・デル・ローエ賞の最終選考にも残りました。

バルセロナの建築批評家ジュゼップ・マリア・モンタネリ・マルトレルは、この陸上競技場について、RCRが古代オリンピアの競技の清々しさや素朴さを再創造し、スポーツの原点が森の開けた場所にあったことを思い出させると評しています。また、RCRの建築作品を通して示される抽象的な環境との関連性は、時間を超越する幾何学と有機物の多様性によって導き出されたものであり、思想のエッセンスであると論評されることもあります。

RCRアルキテクタスは、地域と国際、自然と建築、伝統と革新といった、相反する要素を調和させることで、独自の建築世界を創造し続けています。彼らの作品は、単なる機能的な構造物ではなく、その土地の文化や歴史、そしてそこに生きる人々の物語を語りかける存在として、世界中で高く評価されています。

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