RD-857

RD-857

RD-857は、GRAU索引15D12としても知られる、ソビエト連邦時代にユージュノエ設計局（KB-4）のDB-586部門にて、イワン・イワノフ氏によって開発された初期の液体燃料ロケットエンジンです。このエンジンは、二段燃焼サイクルを採用しており、燃料には非対称ジメチルヒドラジン（UDMH）、酸化剤には四酸化二窒素（N₂O₄）という組み合わせが用いられました。

このRD-857は、当初、8K94大陸間弾道ミサイル（ICBM）、具体的には8K99（PT-20P）ミサイルの第2段エンジンとして搭載されることを想定して設計が進められました。単一の燃焼室を持つ構造となっており、シンプルながらも高度な設計思想が取り入れられていました。

しかし、RD-857は残念ながら量産体制には移行しませんでした。その代わりに、このエンジンで培われた技術と経験は、後継となるRD-862（15D169）エンジンの開発において貴重な基盤となりました。RD-862は、RD-857の設計を基に、出力や信頼性といった性能面での向上が図られ、最終的にはMR UR-100（15A15）ミサイルの第2段エンジンとして実際に運用されることになりました。

RD-857の特筆すべき技術的特徴の一つは、その独自の姿勢制御システムにあります。エンジンの推力偏向制御は、燃焼室内部にガスを噴射することで行われ、これによりミサイルのピッチ軸（機体の上下方向の動き）とヨー軸（左右方向の動き）の制御を可能としていました。さらに、ロール軸（機体の回転方向の動き）の制御に関しては、ターボポンプの駆動によって発生するガスを利用する方式が採用されました。このターボポンプガスは、専用に設けられた4基の小型ノズルから外部に噴射され、その反動によって機体の回転を制御する仕組みでした。

このRD-857エンジンは、その後のミサイル技術の発展において直接的な量産には至らなかったものの、その先進的な設計思想、特に複雑な姿勢制御を試みた点は、後続エンジンの開発に大きな影響を与えたと言えます。

関連情報として、「軌道投入用ロケットエンジンの比較」や、開発元である「Yuzhnoye design office」に関する外部情報源なども参照することで、RD-857が位置する技術史的な背景をより深く理解することができます。

もう一度検索