Ratfor

Ratfor（RATional FORtran）は、プログラミング言語FORTRANを拡張したプリプロセッサ言語です。FORTRANに構造化プログラミングの概念を導入し、より現代的なプログラミングスタイルを可能にすることを目的としています。具体的には、AlgolやC言語といった、FORTRANよりも後の時代に登場したプログラミング言語にみられる制御構造をFORTRANに取り入れています。

Ratforの主な特徴は、FORTRANのコードを記述する際に、より明確で構造的な記述を可能にすることです。例えば、FORTRANには標準で存在しない`if-else`文や`while`文のような制御構造が利用できます。これにより、複雑な処理をより理解しやすく、保守しやすい形で記述できるようになります。

Ratforは、1976年に出版された書籍『Software Tools』（邦題『ソフトウェア作法』）の中で紹介され、広く知られるようになりました。この書籍では、Ratforの設計思想や使用方法、さらにはRatfor自体を実装した処理系についても解説されています。

特筆すべきは、Ratforの処理系がRatfor自身で記述されている点です。これは、自己コンパイルの一種であり、Ratforの柔軟性と表現力を示すものです。Ratforで書かれたコードは、最終的にFORTRANのコードに変換され、FORTRANコンパイラによって実行されます。つまり、Ratforは直接実行される言語ではなく、FORTRANのプリプロセッサとしての役割を担います。

Ratforの登場は、当時のプログラミングにおける構造化プログラミングの重要性を示すとともに、既存の言語を拡張してより高度なプログラミングを可能にするというアプローチの先駆けとも言えます。FORTRANの欠点を補い、より効率的かつ読みやすいコードの作成を可能にするRatforは、当時のプログラマーにとって非常に重要なツールでした。

Ratforは、FORTRANという特定の言語に依存するものの、現代のプログラミング言語が持つ多くの機能の先駆けとなったと捉えることができます。特に、構造化プログラミングの重要性を示すとともに、現代のプログラミング言語設計における重要な原則を示唆するものと言えるでしょう。

現在ではRatforを直接使用する機会は少ないですが、その設計思想や歴史的背景は、プログラミング言語の発展を理解する上で重要な視点を与えてくれます。FORTRANを使用している環境下で、構造化プログラミングを導入する必要が生じた場合は、Ratforの考え方を参考にできるかもしれません。

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