S〔エス〕—君と、彼女と、運命と

S〔エス〕 －君と、彼女と、運命と

『S〔エス〕 －君と、彼女と、運命と』は、南部ゼロイチ氏が描いた日本のSFラブコメディ漫画作品です。ウェブコミック配信サイト『GANMA!』にて、2016年7月25日から2022年5月1日まで連載されました。紙媒体の単行本はTOブックスより2巻が刊行され、その後クラウドファンディングによって全7巻が制作されています。

また、本作の世界観を基にしたノベル版が、杉村隆一氏によって同じく『GANMA!』で2018年12月から2019年2月にかけて連載されました。

物語の舞台は、インプラント型情報端末「epo-C」が普及し、それに搭載された仮想空間コミュニケーション機能「Sシステム」が主流のSNSとして広く利用されている近未来、2045年です。このシステムは、意識を仮想空間「S」として体験することを可能にし、現実とは異なる新しい形の交流や、「SX」と呼ばれるSシステム上での性交渉までをも可能にし、人々のコミュニケーションや恋愛観に大きな変化をもたらしていました。

主人公は東帝大学附属高校に通う高校2年生、宙生駆（そらお かける）。彼は幼馴染の紬汐里（つむぎ しおり）と交際していますが、付き合って2年になるにもかかわらず、Sシステム上でも現実でも、性的な関係には至っていない「ダブル童貞」でした。友人には恋愛経験豊富であるかのように振る舞っているものの、実際は奥手で見栄っ張りな彼は、実践的な女性との付き合い方に疎く、スケベな妄想ばかりをしています。

そんな駆の日常は、彼のepo-Cが謎のコンピュータウイルス「Egg-45」に感染したことから一変します。このウイルスには「NOIR（ノワール）」と名乗る幼女型のAIメッセンジャーが付属しており、駆に対し「18歳の誕生日までに『運命の相手』と現実で性交渉しなければ死ぬ」という、命に関わる過酷な宣告を突きつけます。

一方、生徒会長の榊英恵（さかき はなえ）もまた、NOIRからの同様のメッセージを受け取ったことで、駆と接点を持つようになります。真面目で品行方正ながら毒舌な英恵、駆の長年の理解者で奥手な幼馴染の汐里、そして「駆の運命の相手」を自称する中学生の左手沙愛ん（ひだりて さららん）といった個性豊かなヒロインたちとの関係性が、「Egg-45」ウイルスがもたらす「運命」を巡るラブコメディとして展開していきます。

登場人物たちは非常に個性的です。主人公の宙生駆は、見栄っ張りで妄想好きながらも、命の危機に直面し成長していきます。幼馴染の紬汐里は、駆を深く理解し支える存在ですが、自身もまた恋愛に奥手です。生徒会長の榊英恵は、才色兼備でありながら恋愛経験がなく、都市伝説好きという一面を持ち、駆との奇妙な縁から物語に深く関わります。中学1年生の左手沙愛んは、年下ながら駆の「運命の相手」を名乗り、物語をかき乱すトリックスター的な存在です。

彼らを取り巻く友人たちや、epo-C開発に関わった過去を持つ左手家、そしてEgg-45ウイルスによって既に亡くなっているにもかかわらず、駆を見守る父・宙生剛（そらお たける）など、魅力的なキャラクターたちが複雑に絡み合い、物語に深みを与えています。

本作は、近未来の革新的な技術とそれによる社会の変化をSF的な視点で描きつつ、高校生たちのリアルな恋愛感情や葛藤、そして「運命」という大きなテーマに立ち向かう姿を、シリアスとコメディのバランスを取りながら描いています。個性的なキャラクターたちが織りなすドタバタ劇や、命の期限が迫るサスペンス要素が融合した、読み応えのあるラブコメ作品です。

主な登場人物：

宙生 駆（そらお かける）：主人公。ウイルスの感染者。「ダブル童貞」。
紬 汐里（つむぎ しおり）：ヒロインの一人。駆の幼馴染で彼女。奥手。
榊 英恵（さかき はなえ）：ヒロインの一人。生徒会長。「NOIR」からのメッセージを受け取る。
左手 沙愛ん（ひだりて さららん）：ヒロインの一人。「駆の運命の相手」を自称する中学生。

主な用語：

epo-C：インプラント型情報端末。
Sシステム：epo-C搭載の仮想空間SNS。
SX：Sシステム内での性行為。
Egg-45ウイルス：駆のepo-Cに感染したウイルス。
* NOIR：Egg-45ウイルス付属のAIメッセンジャー。

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