S・R・ナザン

セッラパン・ラーマナータン (S. R. Nathan) の生涯

セッラパン・ラーマナータン（Sellapan Ramanathan、S.R. Nathanとも表記）は、1924年7月3日に生まれ、2016年8月22日に亡くなったシンガポールの政治家、外交官、公務員、そして企業家です。彼はシンガポール共和国の第6代大統領を務め、その卓越したキャリアは多岐にわたります。

生い立ちと初期のキャリア

ラーマナータンは、日本によるシンガポール占領時代には警察の通訳として勤務しました。戦後、独学でマラヤ大学（当時シンガポールにあった）に入学し、1954年に卒業しました。翌1955年には医療ソーシャルワーカーとして公務員のキャリアをスタートさせました。

外交官としての活躍

1966年、ラーマナータンは外務省に入省し、外交官としての道を歩み始めました。その後、1971年には国防省に異動し、安全保障情報部長を務め、国の安全保障に貢献しました。1973年には、三菱重工シンガポール社長を兼務し、1986年までその職を務めました。

シンガポール事件での人質交渉

1974年のシンガポール事件では、ラーマナータンは人質となっていたロイヤル・ダッチ・シェルの従業員の身代わりとなり、シンガポールからクウェートへ同行するという危険な任務を遂行しました。この行動は彼の勇気と責任感を示すものとして広く知られています。

外務事務次官とメディア界での活動

1979年、ラーマナータンは外務省に復帰し、1982年の退職まで外務事務次官を務めました。その後、メディア界に転身し、1982年からストレーツ・タイムズ社長に就任しました。1988年にはシンガポール駐マレーシア高等弁務官、1991年にはシンガポール駐米大使という重要なポストを歴任し、国際的な舞台で活躍しました。

大統領としての役割

1999年、ラーマナータンは無投票でシンガポール共和国大統領に選出され、同年9月1日に就任しました。2005年にも無投票で再選を果たし、2011年9月1日まで12年間、大統領の職を務めました。彼の在任期間中、シンガポールは安定と繁栄を享受しました。

国賓としての訪日と広島訪問

2009年、ラーマナータンはシンガポール大統領として初めて国賓訪日を果たし、皇居での歓迎行事、天皇・皇后との会見、宮中晩餐会、衆参両議院議長、当時の内閣総理大臣麻生太郎による表敬訪問を受けました。また、広島では原爆被害者と面会し、初の外国元首として平和への願いを表明しました。

晩年と死

2016年7月、ラーマナータンは脳卒中で入院し、治療を受けましたが、同年8月22日に亡くなりました。彼の死後、安倍晋三首相が安倍昭恵夫人、岸田文雄外相と共にシンガポール議会を弔問に訪れ、彼の功績を讃えました。ラーマナータンは、シンガポールと国際社会への貢献を通じて、多くの人々に記憶される人物です。

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