S型潜水艦

S型潜水艦について

S型潜水艦（エスがたせんすいかん）は、ソ連海軍が運用していた潜水艦の艦級であり、正式には第9系列潜水艦スレドニャーヤ（Подводные лодки типа «Средняя»）と呼ばれています。非公式には、スターリネツ級という名前でも知られています。この艦級は、1930年代にソ連が海軍力の強化を目指して実施した大規模な艦艇建造計画に基づいて開発されました。

背景と開発

1930年代のソ連は、特に沿岸防衛に適した潜水艦の整備を重要視していましたが、当時の国内技術では満足な性能を持つ潜水艦を製造することは不可能でした。そのため、ソ連は他国の技術を導入する必要があり、目をつけたのがヴァイマル・ドイツ共和国でした。当時のドイツは、ヴェルサイユ条約によって潜水艦の建造が禁止されていたため、ソ連はドイツ企業に造船所を提供し、国内での建造を行うことを条件にドイツの潜水艦技術を導入することに成功しました。また、オランダやイタリア、スペインなど他の欧州諸国とも技術取引を行い、造船技術の強化を図りました。

1933年には新型潜水艦の開発計画が始まり、ドイツ国内での設計が進められることとなりました。この結果、S型潜水艦は第一次世界大戦のドイツ潜水艦の進化形態として誕生しました。主機のディーゼルエンジンはMAN社製であり、その他の電動機や蓄電池等も主にドイツ製のものでした。設計は比較的短期間で完了し、その年内には設計図がソ連へと引き渡されました。

ただし、S型潜水艦の建造にはドイツ製の生産設備が必要だったため、ソ連国内での製造数は限られ、最初の艦は3隻のみが建造されました。その後、ソ連国内での大量建造を可能にするための改良型として、第9改系列（Series IX bis）および第9改二系列（Series IX bis 2）が開発されました。これらの改型では、ディーゼルエンジンを含む多くの部品がソ連製に変更され、国内の生産設備を用いて建造が進められるようになりました。技術的な課題が多数存在し、建造計画には遅延が生じることがありましたが、最終的には第9改・改二系列の潜水艦が合計78隻発注され、53隻が竣工しました。

戦歴と影響

S型潜水艦は、冬戦争や第二次世界大戦の期間中に利用され、当時のソ連潜水艦の中では非常に高い完成度を誇りました。この艦級は、ソ連潜水艦隊の先鋒として効果的に機能しましたが、戦闘中には17隻が沈没する事態が発生しました。特に、乗員の訓練不足や不適切な操作が原因で機雷に接触し沈没するケースが多かったことが問題視されました。1950年代には多くの艦が退役しましたが、一部の艦は中国海軍に譲渡され、1970年代まで運用され続けました。

関連項目

興味がある方は、以下の関連項目も参照してみてください。

• - ソ連・ロシア海軍艦艇一覧
• - S-56 (潜水艦)

このように、S型潜水艦は冷戦時代の海軍力の象徴として、重要な役割を果たした艦級であり、その開発と運用の歴史は海軍の技術進歩の一端を示しています。

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