SEASON'S GREETINGS

山下達郎のアルバム『SEASON'S GREETINGS』は、1993年11月18日にリリースされた、クリスマスソングとアメリカンスタンダードナンバーを収録した、個性的な作品です。

このアルバムの最大の特徴は、全曲をアカペラとフルオーケストラの2つのバージョンで聴ける点にあります。山下達郎の透き通るような歌声と、オーケストラの壮麗なサウンドが絶妙に絡み合い、楽曲それぞれの魅力を最大限に引き出しています。

制作のきっかけは、プロデューサーからの提案がきっかけでした。当初はクリスマスソングのアカペラアルバムを構想していましたが、30代半ばから温めていた「フルオーケストラをバックにスタンダード曲を歌う」という企画を融合させることで、最終的に現在の形になりました。オーケストラアレンジは、山下達郎の盟友である服部克久氏をはじめ、海外の著名なミュージシャンも参加しています。

楽曲選定にもこだわりが見られます。クリスマスソングの定番曲に加え、時代を超えて愛されるスタンダードナンバーをバランスよく配置。さらに、自身の代表曲である「クリスマス・イブ」の英語版も収録され、アルバム全体の完成度を高めています。

レコーディングは、東京とニューヨークの2都市で行われました。特にオーケストラのレコーディングでは、ドラムレス編成を採用することで、クラシック音楽のような繊細で洗練されたサウンドを目指したとのことです。

しかし、このアルバム制作は決して順風満帆ではありませんでした。コンセプトの変更や、アレンジに関する様々な試行錯誤があり、山下達郎自身も相当な苦労を経験しています。ニューヨークでのレコーディングでは、当初予定していたアレンジャーとの相性が合わず、結果的に1曲しか採用されなかったエピソードも語られています。

『SEASON'S GREETINGS』は、50万枚以上のセールスを記録した商業的な成功を収めた一方で、山下達郎自身にとっては、ディレクターとしての労力が大きかったアルバムだったと振り返っています。「自分が作ったアルバムという感じがしない」と語っていることからも、制作過程の大変さが伺えます。しかし、その苦労が実を結び、このアルバムはクリスマスシーズンにぴったりの名盤として、現在も多くのリスナーに愛され続けています。

ジャケット写真も印象的です。サンタクロースに扮した山下達郎の写真は、ファンクラブ会報の表紙にも使用されました。インナー・スリーブの写真は、千葉県船橋市の屋内スキー場を貸し切って撮影されたもので、アルバムの世界観を表現しています。

『SEASON'S GREETINGS』は、単なるクリスマスアルバムではなく、山下達郎の音楽性とクリエイティビティが凝縮された、まさに「企画アルバム」と言えるでしょう。アカペラとオーケストラという異なるアプローチによる楽曲アレンジ、選曲、そして制作過程の苦労など、あらゆる要素が重なり合って、唯一無二のアルバムが誕生しました。クリスマスシーズンはもちろん、一年を通して聴き続けたい、そんな魅力に溢れた作品です。

もう一度検索