SIG SAUER P320

SIG SAUER P320

SIG SAUER P320は、アメリカ合衆国の銃器メーカーであるSIG Sauer社が設計・製造し、2014年に市場に投入した自動拳銃です。同社が2004年に発表したP250を基に開発されており、その革新的な設計思想を受け継いでいます。特に、米軍においてM17（フルサイズ）およびM18（コンパクト）の名称で制式採用されたことで広く知られるようになりました。アメリカ軍の採用を皮切りに、世界各国の軍隊や法執行機関でも次々と導入されています。

特徴と構造

P320は、2014年1月にラスベガスで開催されたSHOT Showで初めて公開されました。このモデルの最も注目すべき点は、SIG Sauer社として初めて採用したストライカー式撃発方式です。これにより、ハンマーを持つ従来の方式とは異なる、シンプルかつ迅速な操作性を実現しています。銃の本体構造は、軽量かつ丈夫なポリマー製のフレーム（グリップモジュール）と、耐久性の高いステンレス鋼製スライドで構成されています。また、アクセサリー取り付け用のピカティニー・レールが標準装備されており、ライトやレーザーサイトなどの装着が容易です。

P250を開発の基礎としているため、P320はP250の優れた特徴であるモジュラー構造を引き継いでいます。これにより、射手は使用目的に合わせてグリップモジュールやスライドを交換し、様々なサイズの銃に組み替えることが可能です。さらに、マガジンや一部の部品にはP250との互換性があります。サイズバリエーションは、フルサイズ、キャリー、コンパクト、サブコンパクトの4種類が展開されています。使用できる弾薬の種類も豊富で、当初は9mmパラベラム弾、.40 S&W弾、.357 SIG弾に対応していましたが、後に.45 ACP弾のモデルも追加されました。

安全性に関する問題

2017年7月頃、P320の安全性に関して懸念が持ち上がりました。テキサス州ダラス警察署が、P320に落下時の暴発リスクがあるとして、調査期間中は職員に携帯の中止を指示したことがきっかけです。この問題は、特定の角度（およそ33度）でグリップ後方から地面に落下させた場合に、意図しない発砲が発生する可能性があると指摘されました。原因としては、トリガーの重量が関係していると考えられています。一部の個体では、銃本体が落下し地面に衝突した際の慣性によってトリガーが作動してしまうほど、トリガーアセンブリが重くなっていたためと推測されています。複数の独立したメディアや機関が行ったテストでも、この落下による暴発リスクがおよそ40%の確率で確認されました。SIG Sauer社はこの問題を受けて、既存のモデルに対して無償のアップグレードプログラムを提供し、安全性の向上を図りました。

主な採用状況

P320は、その優れた性能とモジュラー性から、世界中の軍や法執行機関で採用されています。特に重要なのは、アメリカ合衆国陸軍がM9拳銃の後継を選定するモジュラーハンドガンシステム（MHS）計画、またはXM17計画において、P320を制式拳銃として採用したことです。陸軍と空軍が主導したこの選定プロセスを経て、9x19mmパラベラム弾仕様に手動セフティレバーを追加したモデルが、フルサイズはM17、コンパクトはM18として採用されました。アメリカ国内では、陸軍の他にも、アメリカ合衆国移民・関税執行局などの法執行機関でも使用されています。

国際的にも採用は進んでおり、例えばオーストラリア軍は9mmパラベラム弾のX-Carry Proモデルを「F9」の名称で採用し、従来のHi-Power Mk3を置き換えています。2024年12月には最初の供給が行われました。カナダ軍も9mmパラベラム弾のC22モデルを採用。その他、タイ王国国家警察庁、デンマーク国防軍（Xシリーズ キャリーサイズ）、ノルウェー警察（Xシリーズ）、フランス国鉄の警備部門（コンパクトサイズ）など、多岐にわたる組織でP320が採用されています。

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