SIMM

SIMM：パーソナルコンピュータを支えたメモリモジュール

SIMM（Single In-line Memory Module）は、かつてパーソナルコンピュータでRAMとして広く使用されていたメモリモジュールです。現在主流のDIMMとは異なり、SIMMはモジュールの両面に接点を持つのが特徴でした。

SIMMの登場と背景

初期のPCでは、DRAMチップをマザーボード上のソケットに直接装着していました。しかし、80286ベースのPC/ATが登場し、メモリ容量が大幅に増加すると、マザーボードのスペース効率やメモリ増設の容易さが課題となりました。そこで、複数のDRAMチップを一体化したメモリモジュールが登場します。SIMMはその代表的な規格です。

それまでの個々のDRAMチップ装着に比べ、SIMMはメモリ増設が容易になり、大幅な省スペース化を実現しました。先行するSIPP(Single In-line Pin Package)メモリモジュールはピンが折れやすいという問題を抱えていましたが、SIMMは接点プレートを採用することでこの問題を解決し、急速に普及しました。IBMのSkip Coppola氏によって考案され、1980年代半ばのPS/2で初めて採用されました。

SIMMの採用によって、マザーボードの小型化、メモリ容量の増加、そしてメモリチップのベンダー変更やパッケージ変更への柔軟な対応が可能となりました。IBMだけでなく、キングストンテクノロジーなどもSIMMの製造にいち早く参入し、市場を拡大しました。

SIMMの種類と仕様

SIMMには、主に30ピンと72ピンの2種類がありました。

30ピンSIMM: 8ビットデータバス（パリティビットを含むと9ビット）に対応しており、32ビットデータバスを持つプロセッサ（例：80486）では4枚をセットで使用する必要がありました。256KB、1MB、4MB、16MBなどの容量がありました。
72ピンSIMM: 32ビットデータバス（パリティビットを含むと36ビット）に対応し、1990年代前半に30ピンSIMMから主流へと移行しました。1MB、2MB、4MB、8MB、16MB、32MB、64MB、128MBなどの容量がありました。Macintosh IIfxでは、独自の64ピンSIMMが使用されていました。

プロセッサとメモリモジュールのデータバス幅が異なる場合、メモリバンクを埋めるために複数のSIMMをセットで使用する必要がありました。例えば、32ビットデータバスのプロセッサでは、30ピンSIMMを4枚、または72ピンSIMMを1枚使用します。64ビットデータバスでは、72ピンSIMMを2枚使用するのが一般的でしたが、メモリコントローラの仕様によっては例外がありました。

SIMMソケットとDRAM

初期のSIMMソケットは挿し込み型でしたが、その後、挿入力を軽減するZIF (Zero Insertion Force) ソケットが主流となりました。ZIFソケットは、SIMMを所定の位置に回転させてロックする機構を持ち、取り付け、取り外しが容易でした。プラスチック製クリップは壊れやすいため、金属製クリップのソケットも使用されました。

SIMMで使用されるDRAMには、EDO (Extended Data Out)やFPM (Fast Page Mode)などの種類がありました。SIMM規格はJEDECのJESD-21Cで標準化されています。

SIMMからDIMMへ

SIMMは、後継規格であるDIMM (Dual in-line memory module) に取って代わられました。DIMMは、両面ではなく片面にのみ接点を持つため、SIMMよりも小型で、より多くのメモリ容量に対応できるよう進化しました。SIMMは現在ではほとんど使用されなくなりましたが、PCの歴史において重要な役割を果たしたメモリ規格です。

まとめ

SIMMは、パーソナルコンピュータの発展に大きく貢献したメモリモジュールです。その登場はメモリ増設の容易性と省スペース化を実現し、PCの進化を加速させました。技術的な制約や後継規格の登場によって現在では使われなくなりましたが、PCの歴史を知る上では重要な要素の一つです。

もう一度検索