SOUL (漫画)

荒廃都市の生存者たち：漫画『SOUL』の世界

猿渡哲也氏による漫画『SOUL』は、社会の崩壊と人間の業を描いたバイオレンスアクション作品です。1998年、国家の統制が及ばない無法地帯と化した都市「インフェルノ・シティー」を舞台に、主人公リョウとその仲間たちの生き様、そして彼らが遭遇する暴力と混沌を描いています。

物語の舞台：インフェルノ・シティー

1993年、急増する凶悪犯罪に対処できなくなった政府は、都市中心部を「開放区」と宣言します。この開放区こそが、犯罪者たちが跋扈する「インフェルノ・シティー」です。秩序が崩壊したこの街では、弱肉強食のルールが支配し、人々は日々、暴力と隣り合わせの生活を送っています。

主人公リョウとその仲間たち

主人公リョウは、インフェルノ・シティーでストリートファイトで生計を立てる若者です。彼は天賦のボクシングの才能を持ち、その圧倒的な戦闘力で悪党たちと戦います。しかし、彼の過去には、生後すぐにコインロッカーに捨てられたという衝撃的な事実があり、その経験は彼に並外れた戦闘本能と、残酷なまでの戦闘能力を与えています。彼のトレードマークはロングコートで、稼いだお金を裏地に隠しているという、荒廃した街で生きるための知恵が見て取れます。

リョウと共に生きる仲間として、アフリカ系アメリカ人のジョージと、浮浪児のロッドがいます。ジョージはリョウのマネージャー的な存在で、ショットガンを所持していますが、むやみに発砲することはありません。ロッドはスリや盗みを繰り返して生き延びる、狡猾で生意気な少年です。両親を悪党に殺されたという、悲しい過去を持っています。

圧倒的な暴力と、個性豊かな敵役たち

インフェルノ・シティーには、リョウたちを待ち受ける様々な敵がいます。「マッド・ハンターズ」のボス、ザウルスは、巨体と圧倒的な怪力で開放区を支配する凶悪な殺人者です。リョウは全裸になったことで解放された闘争本能でザウルスを打ち破りますが、その後ザウルスは住民によるリンチで命を落とします。

高級レストラン「ZOD」のオーナー、ゾッドは、インフェルノ・シティーを支配する秘密組織「OSA」のメンバーです。背の低さをコンプレックスに持ち、侮辱されると凶暴性をむき出しにします。実は女性であるという、意外な事実も明かされます。ゾッドのボディガードであるシンバは、アフリカ出身の屈強な男で、驚異的な身体能力を持っています。

開放区Fブロックの支配者ジールは、ゾッドの兄で、中性的な容姿と、強く美しいものへの偏愛が特徴です。また、マヤという美貌の女医や、元プロボクサーのサムソン・ブリューワーなど、様々な人物が物語を彩ります。闇ボクシング選手ハンスは、人体強化薬物の影響で、狂暴な戦闘力を持つ危険な存在です。

絶版となった名作の復活

『SOUL』は、集英社ヤングジャンプコミックスより全4巻が発売されましたが、現在は絶版となっています。しかし、その圧倒的な作風と、忘れがたいキャラクターたちから、根強い人気を誇り、現在では電子書籍版で読むことができます。暴力的な描写も含まれる作品ですが、人間社会の闇と、それでも生きようとする人々の強さを描いた、忘れ難い作品と言えるでしょう。 最終巻には、それぞれ異なるタイトルの読み切り作品が収録されているのも、ファンにとって嬉しいポイントです。

もう一度検索