SWAN彗星

SWAN彗星

「SWAN彗星」（スワンすいせい、英語: Comet SWAN）は、太陽観測を目的とした宇宙望遠鏡、SOHO（ソーホー）衛星に搭載されている特定の観測装置、SWAN（Solar Wind ANisotropies、太陽風非等方性観測機器）によって得られたデータから発見された彗星の総称です。

発見の経緯

SOHO衛星は、太陽とその周辺環境を継続的に観測するために打ち上げられました。この衛星にはいくつかの観測機器が搭載されていますが、SWAN機器は、太陽から放出されるプラズマの流れである太陽風の全天にわたる分布を観測する役割を担っています。SWAN彗星は、このSWAN機器が捉えたデータを詳細に解析することによって発見されます。これは、地上の望遠鏡による直接観測だけでなく、宇宙望遠鏡が取得した科学データの中から新たな天体を見つけ出す、現代天文学における発見手法の一つと言えます。

命名について

SWAN彗星という名称は、その発見がSOHO衛星のSWAN機器のデータに基づいていることに由来します。彗星の命名規則においては、発見者や発見プロジェクトの名前が冠されることが一般的です。SWAN彗星の場合、発見に関わった個人や、他の観測プロジェクトと共同で発見された事例では、SWANという名前が連名の一部として使用されることがあります。一方で、単独で「SWAN」の名前が付けられる場合もあります。

2025年4月の時点で、「SWAN」という名称を含む彗星は、単独で命名されたものと連名で命名されたものを合わせて、合計15個が確認されています。

連名での命名例

SWAN彗星の中には、他の観測者や発見プロジェクト名と組み合わせて命名されている例がいくつか存在します。

C/2009 F6 (Yi-SWAN):
この彗星は、韓国の研究者によって発見されたデータも関わっており、韓国人名が彗星名の一部として命名された初めての事例として知られています。SWAN機器のデータも発見に貢献したため、Yi（発見者名）とSWANが組み合わされています。
C/2015 F5 (SWAN-Xingming):
この彗星も、SWAN機器のデータと、中国の星明観測所（Xingming Observatory）が関連する観測によって発見されたため、SWANとXingmingの名前が連名として使用されています。

これらの例からもわかるように、SWAN彗星は特定の単一の彗星を指すのではなく、SOHO衛星のSWAN機器のデータが発見の根拠となった彗星のグループを指しています。

関連する彗星発見プロジェクト

SWAN彗星と同様に、特定の観測プログラムや機器の名前が冠された彗星はいくつか存在します。これらは大規模なサーベイ観測によって多数の彗星や小惑星を発見しています。

SOHO彗星:
SWAN彗星はSOHO衛星によって発見された彗星の一種ですが、SOHO衛星に搭載された他の機器（特にLASCOコロナグラフ）のデータから発見された彗星全体を指す「SOHO彗星」という広範な分類も存在します。SOHO彗星は非常に多数発見されており、その多くは太陽に非常に接近するクロイツ群彗星です。
ATLAS彗星:
ハワイにあるATLAS（Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System）望遠鏡システムによって発見された彗星群です。
LINEAR彗星:
アメリカのLINEAR（Lincoln Near-Earth Asteroid Research）プロジェクトによって発見された彗星群です。元々は地球近傍小惑星の捜索を目的としていました。
パンスターズ彗星:
ハワイのPan-STARRS（Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System）望遠鏡によって発見された彗星群です。

これらの例は、現代の天文学における彗星発見が、個人の天体観測家によるものだけでなく、大規模な観測システムやプロジェクトによっても盛んに行われている現状を示しています。

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