SWAY (松山千春の曲)

松山千春が1989年に発表したシングルに、「SWAY」（スウェイ）があります。この楽曲は、彼のキャリアにおいて通算29作目となるシングルとして、同年11月10日に世に送り出されました。

このシングルが持つ最大の特徴は、そのリリース形態にあります。当時、音楽メディアはアナログレコードからコンパクトディスク（CD）へと急速に移行しつつありました。そのような時代の潮流を受け、「SWAY」は松山千春のシングルとしては初めて、8cmCDという形式のみで発売されました。従来のEP盤やシングルレコードといったアナログ盤は、一般向けには製造されませんでした。しかし、プロモーション活動のために、ごく限られた数ながらアナログ盤が存在したことも記録に残されています。これは、メディアが転換期にあった当時の音楽業界の一端を示す出来事と言えるでしょう。

「SWAY」とそのカップリング曲（インプット情報には曲名はありませんが、シングルには両A面でない限り通常カップリング曲が存在します）の収録状況も特異でした。シングルの発売からわずか数週間後の1989年11月28日には、松山千春のオリジナルアルバム『ISHI』がリリースされました。しかし、「SWAY」とそのカップリング曲は、このアルバム『ISHI』には残念ながら収録されませんでした。シングルの新曲が発売直後のオリジナルアルバムに収録されないケースは珍しくありませんが、ファンにとっては少々意外な展開だったかもしれません。

これらの楽曲がアルバムという形で聴けるようになったのは、シングルリリースから一年近くが経過した1990年のことでした。この年、松山千春の膨大な楽曲の中から選りすぐられた代表曲を集めたベストアルバムシリーズの新たな一作、『起承転結 V』が発売されました。「SWAY」は、このベストアルバム『起承転結 V』において初めてアルバムに収録されたのです。したがって、「SWAY」をアルバムで楽しむためには、『起承転結 V』を手にする必要がありました。

「SWAY」は、松山千春の豊かな音楽活動の一環として発表された一曲であり、特にメディア形態の変遷期における彼の作品として、そのリリース方法やアルバム収録状況といった点で注目すべきシングルと言えるでしょう。このシングルは、松山千春のディスコグラフィにおける重要な一頁を飾っています。

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