Setun

Setunコンピュータ

Setun（ロシア語: Сетунь）は、1958年にモスクワ大学で開発されたコンピュータです。このプロジェクトは、セルゲイ・ソボレフとニコライ・ブルセンツォフの指導のもとに進められました。Setunは、三進数を扱うコンピュータとして当時の技術の中で最も先進的であり、他のコンピュータで一般的に使用されている二進法ではなく、平衡三進法を採用しています。

開発背景と製造

Setunは、モスクワ大学における計算ニーズに応える目的で設計されました。1959年から1965年にかけて、Kazan Mathematical plantで合計50台が製造されました。このコンピュータのオペレーティングメモリは81ワードで構成され、各ワードは三値の単位である18トリットを持つという独自の設計が特徴です。また、別途設計された磁気ドラムメモリには、さらに1944ワードが格納可能でした。

1965年から1970年の間に、モスクワ大学では通常の二進法によるコンピュータが導入されるようになり、Setunは次第に使われなくなり、最終的には置き換えられました。新しく導入されたコンピュータはSetunと同等の性能を発揮しましたが、その費用は2.5倍に達しました。

Setun-70の開発

1970年、Setunの後継機種として三進数コンピュータのSetun-70が開発されました。この新型では、エドガー・ダイクストラの構造化プログラミングの原則がハードウェアに組み込まれました。Setun-70は、ニコライ・ブルセンツォフによって独自に開発された短い命令セットを使用しており、RISCの原則とは異なるアプローチで設計されました。

Setun-70のハードウェアアーキテクチャは後にDSSPというシステムへと進化しました。DSSP（Dialogue System of Structured Programming）は、二進コンピュータ上でSetun-70をエミュレートし、構造化プログラミングの利点を生かすことを目的としています。DSSPのプログラミング言語は、構文的にForthに似ていますが、基本的な命令の順序には顕著な違いがあり、特に条件分岐においてその差が見て取れます。その開発は、ニコライ・ブルセンツォフとモスクワ大学の博士課程に在籍していた学生たちによって行われ、1989年には32ビット版も実装されました。

まとめ

Setunとその後継機種であるSetun-70は、コンピュータ技術の進化における重要なステップを示しています。これらのコンピュータは、計算の新しい方法を提供すると同時に、ソフトウェア開発の分野でも革新を促進しました。Setunの歴史は、単なる技術的成果だけでなく、当時の教育機関における技術的な進展に多大な影響を与えたと言えるでしょう。

もう一度検索