Sgt.

sgt.（エスジィティ）

日本のポストロックシーンにおいて、インストゥルメンタルバンドとして独自の存在感を放つのが、sgt.（エスジィティ）である。このバンドは、ベーシストの明石興司が中心となり、1999年に活動を開始した。

結成から器楽曲への変遷

バンドの結成当初は、ボーカルを含むスリーピース編成で活動しており、その音楽性はグランジやエモ、ノイズといった要素を取り入れたものであった。しかし、2000年にギタリストの新里幸一が脱退したことを機に、sgt.はそのスタイルを大きく変更。完全にインストゥルメンタル（器楽曲）に特化したバンドへと生まれ変わる。

ギタリストが不在となった後、約2年間はベースとドラムの最小編成で精力的にライブ活動を展開。この時期には、時折ゲストとしてDJを迎え入れるなど、既成の枠にとらわれない柔軟なアプローチも見せている。この経験が、後のバンドサウンドの多様性の礎となったと言えるだろう。

新たなメンバーを迎えサウンドを確立

2002年、sgt.はさらなる飛躍を遂げるべく、バンドの編成を刷新する。この時、ギター、ヴァイオリン、シンセサイザーといった新たな楽器パートが導入され、サウンドに深みと広がりが加わった。現在の主要メンバーである成井幹子（ヴァイオリン、ピアノ）と大野均（ドラム）が正式に加入したのもこの時期である。また、一時的に向山聡孝もメンバーとして名を連ねていた。この多楽器編成への移行により、sgt.の音楽はより緻密で、ドラマティックな展開を持つポストロックサウンドへと進化を遂げた。

活動範囲の拡大と自主レーベル設立

バンドは結成当初、八王子を拠点として活動していたが、徐々にその活動範囲を都心へと広げていく。高円寺、新宿、下北沢、渋谷、三軒茶屋といった主要なライブハウスでの演奏を重ねることで、その音楽性とライブパフォーマンスは多くのリスナーに認知されるようになる。

2003年には、バンド初の音源となるEP「すばらしき光」を発表した。このEPには、1曲で約17分という長尺の楽曲が収録されており、その実験的な姿勢を示すものとなった。当初はライブ会場限定での販売だったが、2005年からはディスクユニオンでも取り扱われるようになった（現在は廃盤）。

そして2005年、sgt.は音楽制作における独立性を追求するため、自主レーベルPenguinmarketRecordsを設立する。このレーベルからリリースされたアルバム「perception of causality」は、日本のインストゥルメンタルシーンで名高いtoeの美濃隆章がマスタリングを手掛け、高い音質でバンドのサウンドを表現している。自主レーベルからのリリースは、彼らの活動における重要な節目となった。

現在の編成と多様なゲスト参加

現在のsgt.は、創設メンバーである明石興司（ベース）、そして成井幹子（ヴァイオリン・ピアノ）、大野均（ドラム）という3名を核とした編成で活動を展開している。彼らの強固なアンサンブルが、バンドの音楽表現を支えている。

また、sgt.の大きな特徴の一つとして、ライブやレコーディングに不定期で参加するゲストミュージシャンの存在が挙げられる。これまでに、向山聡孝、中村圭作、清田敦、大谷能生、加藤雄一郎、外間正巳、毛利元祐、kim、mitchel、神林大地、金山隆一といった、様々なバックグラウンドを持つアーティストたちが、バンドのサウンドに新たな息吹を吹き込んできた。これらの多様な才能とのコラボレーションは、sgt.の音楽世界をより豊かで予測不能なものにしている。

sgt.は、結成から現在に至るまで、メンバーの変遷や音楽性の探求を続けながら、独自のインストゥルメンタルサウンドを追求してきた。彼らの生み出す音の景観は、聴く者の想像力を掻き立て、ポストロックというジャンルの可能性を広げ続けている。

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