Static Random Access Memory

SRAM（スタティックRAM）詳解

SRAM（スタティックランダムアクセスメモリ）は、半導体メモリの一種であり、DRAM（ダイナミックRAM）と対比される存在です。その名の通り、静的な回路方式で情報を保持するため、DRAMのような周期的なリフレッシュ動作が不要です。ただし、RAMという名称は読み書き可能なメモリを指す慣例的なものであり、厳密な意味でのランダムアクセスとは異なる点に注意が必要です。この点はDRAMにも同様のことが言えます。

SRAMの特徴

SRAMは、記憶素子にフリップフロップ回路を用いるため、DRAMと比べて以下の特徴があります。

リフレッシュ不要: 周期的なデータ更新が不要なため、安定した動作が可能です。
高速アクセス: DRAMよりも高速なデータ読み書きが可能です。
低消費電力（アイドル時）: アクティブでない状態では、非常に低い消費電力で動作します。
単純な制御: インターフェースがシンプルで、制御が容易です。
高コスト・低密度: 内部構造が複雑なため、DRAMと比較して単位面積あたりの記憶容量が小さく、コストが高くなります。
揮発性メモリ: 電源供給が途絶えると記憶内容は失われます。

ただし、近年ではDRAM技術を応用し、消費電力を抑え、SRAMと同等のインターフェースを持つ疑似SRAMも存在します。

SRAMの設計

SRAMの各ビットは、一般的に4つのトランジスタで構成される2つの交差接続されたインバータ（6T SRAM）で構成されています。この2つの安定状態が0と1に対応します。読み書きにはさらに2つのトランジスタが必要となるため、合計6つのMOSFETが使用されます。

より多くのトランジスタ（8T、10Tなど）を用いた構成もあり、これはマルチポート型SRAMとして、ビデオメモリやレジスタファイルなどに用いられます。セルあたりのトランジスタ数を減らすことでセルサイズを縮小し、チップ面積あたりのビット数を増やすことでコスト削減に繋がります。ただし、3Tや1Tセルなどは、実際にはDRAMに分類されます。

セルのアクセスは、ワード線（WL）によって制御され、アクセス用トランジスタを介してビット線（BL）に接続されます。ビット線はデータの送受信に使用され、ノイズ対策として、反転信号も同時に用いられるのが一般的です。

SRAMは、DRAMと比較して高速動作が可能な理由は、アドレスビットを同時に受け付ける点にあります。DRAMは、ピン数を減らすためアドレスビットが多重化されているため、一度に全アドレスビットを受け取ることができません。

アドレス線m本、データ線n本のSRAMの容量は2^mワード、または2^m×nビットとなります。

SRAMの動作

SRAMセルは、「スタンバイ」「読み出し」「書き込み」の3つの状態を持ちます。

スタンバイ: ワード線がアサートされていない状態。アクセス用トランジスタはセルとビット線を切り離し、インバータは状態を保持します。
読み出し: ワード線をアサートし、アクセス用トランジスタをイネーブル状態にします。セルの値がビット線に転送され、センスアンプで読み取られます。SRAMはセルが能動的にビット線を駆動するため、DRAMと比べて帯域幅が大きくなります。
書き込み: 書き込む値をビット線に入力し、ワード線をアサートすることで値をラッチします。ビット線入力ドライバは、セル内のトランジスタよりも強い必要があります。

アクセス時間は、アドレス信号送出からデータ出力までの時間であり、70ns程度が一般的です。データ保持時間は数ナノ秒です。アドレスを順次変更する読み出しでは、アクセス時間が短縮されます。

SRAMの用途

SRAMは、その高速性と低消費電力性から、様々な用途で使用されます。

キャッシュメモリ: CPUのキャッシュメモリとして広く利用されています。
レジスタファイル: マイクロプロセッサのレジスタとして使用されます。
ビデオメモリ: グラフィックカードのビデオメモリとして使用されます。
FPGA/CPLD: プログラマブルロジックデバイスの構成要素として使用されます。
組み込みシステム: 産業機器、車載システムなど、リアルタイム性が求められるシステムで使用されます。
バッファメモリ: ハードディスク、ネットワーク機器などで、データの一時保存に使用されます。

SRAMの種類

SRAMには、様々な種類があります。

nvSRAM: 電源遮断時にもデータを保持できる不揮発性SRAM。バッテリーバックアップ機能を持つものもあります。
非同期SRAM: クロック信号に依存せず、アドレスの変化で読み書きを制御します。
同期SRAM: クロック信号に同期して動作します。
* その他: ZBT SRAM、syncBurst SRAM、DDR SRAM、QDR SRAMなど、様々な機能を持つSRAMがあります。トランジスタの種類（バイポーラ、MOSFET）によっても分類されます。

まとめ

SRAMは、高速性、低消費電力性、シンプルな制御といった特徴を持つ重要な半導体メモリです。その特性を活かし、コンピュータシステムから組み込み機器まで、幅広い分野で利用されています。今後、更なる高性能化、低消費電力化が期待されます。

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