Steam Machine

Steam Machineとは

Steam Machineは、Valve Corporationが開発したゲームプラットフォーム構想です。LinuxベースのオペレーティングシステムであるSteamOSを搭載し、Steamで配信されるゲームをテレビなどの大画面でプレイすることを目指しました。PCのような自由度の高いハードウェア構成や、革新的なSteamコントローラーが特徴でしたが、コンシューマー市場では普及に至らず、事実上終了しました。

歴史

Steamは、もともとWindows向けのゲームダウンロード販売プラットフォームとして始まりました。Valveは、MicrosoftやAppleのOSに対する不満から、オープンソースのLinuxに着目し、ゲームプラットフォームとしての可能性を模索しました。2012年にはLinux版Steamクライアントがリリースされ、クロスプラットフォームでのゲームプレイを可能にする「Steam Play」構想も打ち出されました。

Steam Machineの構想は、2012年頃から業界内で噂され始めました。当初は「Steam Box」という仮称で呼ばれ、リビングルームでのゲームプレイを想定したインターフェース「Big Pictureモード」の搭載が示唆されました。2013年1月には、ValveのCEOであるゲイブ・ニューウェルが、基本モデルを自社開発する一方で、他のハードウェアメーカーによる開発・販売を制限しない方針を明らかにしました。

2013年のCESでは、Xi3社が「ピストン」という試作機を出展しました。これはSteamとBig Pictureモードの動作を重視したものでしたが、Valveは直接的な関与を否定し、最終デザインではないことを強調しました。2013年9月には、Steam MachineがSteamOSとSteamコントローラーと共に正式発表され、2014年中頃の発売が予定されました。しかし、発売は延期され、最終的には2015年11月に最初の製品が発売されました。

しかし、Steam Machineは発売延期中にPS4やXbox Oneといった競合機が市場を席巻し、SteamOS対応ゲームも少なく不振が続きました。2018年4月にはSteam公式サイトからリンクが削除され、事実上終了となりました。2019年11月には、Steamコントローラーの販売も終了しました。

ハードウェア

ハードウェア構成

Steam Machineの大きな特徴は、固定されたハードウェア仕様を持たないことです。SteamOSと対応ゲームが動作する最低限のスペックを満たせば、ユーザーは自由に自作したり、パーツを交換・追加したりすることができました。Valveは複数のハードウェアメーカーと提携し、さまざまな製品を発売しましたが、ユーザーによるカスタマイズも奨励されました。

ベータテスト用に配布された試作機は、Intel Core i7/i5/i3 CPU、Nvidia GeForce GTXシリーズのGPU、16GB RAM、1TB HDDなどを搭載していました。

また、ValveはAMDと提携し、将来のSteam Machine開発と保証を行いました。CESでは、iBuyPower、デジタルストーム、エイリアンウェアなど、多数のメーカーがSteam Machineの試作機を出展しました。

提供メーカー

エイリアンウェアは、2014年9月にSteam Machineの発売を開始しました。当初は固定スペックの機種のみでしたが、将来的にはスペックを更新する予定でした。

Steamコントローラー

Steam Machineに合わせて開発されたSteamコントローラーは、従来のゲームコントローラーとは異なる操作感を提供しました。2つの高解像度トラックパッド、16個のボタン、ハプティクス技術などが搭載され、マウスとキーボードに近い操作性を目指しました。

初期デザインにはタッチスクリーンが搭載されていましたが、後に廃止されました。トラックパッドは、当初のトラックボールの機能をシミュレートし、より多くのカスタマイズを開発者に提供する目的で採用されました。Valveは、コントローラーの製造を外部に委託した場合、十分な供給が難しいと判断し、自社で製造を行いました。

Steamリンク

Steamリンクは、Steamが起動できるPCとは別の場所にあるディスプレイでSteamを利用するためのストリーミングデバイスです。HDMI出力、有線LAN、無線LAN、USBポートなどを搭載し、手軽にSteamゲームを楽しむことができます。

SteamOS

SteamOSは、Steam Machineに搭載されるLinuxベースのオペレーティングシステムです。メディア共有、メディアサービス、ライブストリーミング、家族での共有、ペアレンタルコントロールなどの機能が追加されています。SteamOSは無料で利用でき、Steam Machineのスペックを満たすハードウェアであれば、誰でもインストールできます。

ゲームとソフトウェア

SteamOSで動作するゲームは、Linuxでネイティブに動作するように開発されます。Steamworks APIを通じてLinuxとの互換性が提供されており、多くのゲームがSteamOSで追加の修正なしで動作します。Valveは、SteamOS専用のゲームを配信する予定はないとしていますが、リビングルームでのプレイに最適なゲーム開発は容認しています。Steam Playを通じて、ユーザーはWindowsやOS Xで購入したゲームをSteamOSでプレイできます。

まとめ

Steam Machineは、PCゲームをリビングルームで手軽に楽しむというコンセプトで登場しましたが、コンシューマー市場での普及には至りませんでした。しかし、PCゲームの可能性を広げようとしたValveの挑戦は、後のゲームプラットフォームに大きな影響を与えました。

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